山海経に出てくる奇妙な国や民族を集めてみる特集の第二弾です。今回は、苗民、赤脛民、沃民、昆吾族人、羽民国、奇肱国、白民国、毛民国をご紹介します。
苗民(びょうみん miao2min2 ミャオミン)
苗民は古代の民族であり、山海経や神異経にその記述が見られています。苗民と同一である可能性がある民族に三苗がいますが、三苗は四罪に数えられるように古代中国で暴虐を尽くしたという民族です。
山海経の大荒北経には、”西北方向の海外、黒水の北岸に羽のある人がおり、名を苗民と言った、顓頊が驩兜を生み、驩兜は苗民を生んだ。苗民の姓は厘で肉類を食べた。さらに章山という名の山があった。”とあり、驩兜の子供として書かれています。
驩兜に関しては以下をご覧ください!
四罪(共工、鯀、三苗、驩兜):古代中国神話中の悪行を尽くし舜に断罪されてしまった悪神達
顓頊に関しては以下をご覧ください!
神異経には、”西荒中に人がおり、顔も目も手足も皆人形で、腋の下に翼があったが飛べなかった。饕餮であり、淫逸で理は無く名を苗民と言う。春秋で言う三苗で、書に言う三苗を三危に流すである。”と言う記述が見られ、饕餮であると書かれています。
饕餮は四凶とも言われている恐ろしい化け物です。
出典:baidu
赤脛民(せきけいみん chi4jing4min2 チィジンミン)
赤脛民は山海経に一言だけ記載がある謎の民です。
山海経の海内経には、”北海の内に幽都山と言う山があり、黒水はこの山から流れ出ていた。山上には黒色の鳥、黒色の蛇、黒色の豹、黒色の虎、ふさふさの毛の尻尾を持つ黒い狐がいた。大玄山があった。玄丘民がいた。大幽国があった。赤脛民がいた。”とあります。
出典:山海経
沃民(ようみん wo4min2 ウォーミン)
沃民は古代中国では天国のような土地に住んでいた民です。
山海経の大荒西経には、”西に王母山、壑山、海山があった。沃民国があり、沃民はこのあたりに住んでいた。沃野に生きる人は鳳鳥が産んだ卵を食べており、天から降る甘露を飲んでいた。皆沃野の人々が鳳鳥の卵を美味しく食べ、甘露を美味しく飲んでいると思い、自分も鳳鳥の卵と甘露を味わってみたいと思った。この場所にはさらに甘華樹、甘柤樹、白柳樹、視肉、三騅馬、璇玉瑰石、瑶玉碧玉、白木樹、琅玕樹、白丹、青丹があり、銀と鉄を豊富に産出した。鸞鳥は自由自在に歌を歌い、鳳鳥は自由自在に舞を舞い、さらに各種の野獣がおり群れを作っていた。このため、肥沃な野という意味の沃野という名がついた。”とあります。
沃野に住む人々は鳳鳥の卵を食べ甘露を飲んでいたとされています。また、文中には視肉と言う文字が見られますが、視肉は当時は不老不死の妙薬となると信じられていた謎の生き物です。視肉は肉の塊のような化け物で切っても切っても死なずに、また食べても元通りに戻ってしまいます。
実はこの視肉は実在しており、粘菌の一種です。詳しくは以下をご覧ください。
視肉:食べても食べても元に戻ってしまう不老不死を与える仙薬の原料
山海経大荒西経に関しては以下をご覧ください!
出典:山海経
昆吾族人(こんごぞくじん kun1wu2zu2ren2 クンウーズーレン)
昆吾族人は山海経に記載が見られる民族です。
荒西経には、”大荒の中に龍山があり、太陽と月とが沈む場所であった。三つの池が集まってできた大池があり、三淖と言い、昆吾族人が食料を得る場所であった。”とあり、池から食料を得ていると書かれています。
山海経大荒西経に関しては以下をご覧ください!
一方で、昆吾は国の名前でもあり、夏王朝末期に存在したとされます。夏王朝は商湯(成湯)によって滅ぼされますが、昆吾国は夏王朝を滅ぼす前の湯によって滅ぼされてしまった方国(昔の国の事)です。
昆吾国は濮陽、現在の河南省濮陽市にあったとされ、上古五覇の一つとされています。
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羽民国(うみんこく yu3min2guo2 ユィミングオ)
羽民国は全身に羽毛がある民族の住む国です。
山海経の海外南経には、”羽民国は滅蒙鳥の東南にあり、そこの人は皆頭部が非常に長く、全身に羽毛が生えている。別の言い方をすると、羽民国は比翼鳥の東南面にあり、そこに住む人々は皆両頬が非常に長い。”とあり、羽毛が生えていることに加えて頭部が長いという特徴を持っています。
山海経海外南経に関しては以下をご覧ください!
更に、大荒南経には、”また、成山があり、甘水は最終的にこの山に流れ到った。季禺国という国があり、そこに住む人は帝顓頊の子孫であり黄米を食べていた。さらに羽民国があり、そこに住む人は皆羽毛が生えていた。”とあり、こちらも羽毛が生えた人として書かれています。
山海経大荒南経に関しては以下をご覧ください!
奇肱国(きこうこく ji1gong1guo2 ジーゴングオ)
奇肱国は魚人国や夜郎国とも呼ばれている、古代中国に存在したとされる国です。国民も不思議で腕が一本しかないのですが目は三つあったと言います。しかも目は陰陽の太極図のようであり、何か妙な術など使いそうなイメージです。
山海経の海外西経には、”奇肱国は一臂国の北面にあり、そこに住む人々はみな腕が一本と三つの眼があり、眼は陰陽を成し陰は上に陽は下にあった。吉良という名の馬に乗っていた。そこには鳥がおり、二つの頭に紅黄色の体をしており、奇肱国の民衆のそばで暮らしていた。”とあります。
奇肱人たちの乗る馬は吉良と言い、こちらも乗ると寿命が延びると言われている不思議な馬です。
吉量に関しては以下をご覧ください!
山海経海外西経に関しては以下をご覧ください!
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白民国(はくみんこく bai2min2guo2 バイミングオ)
白民国は古代中国にあったとされる国家ですが、その国民の肌は白かったため白民国と呼ばれています。
山海経の海外西経には、”白民国は龍魚の北面にあり、そこに住む人々は皆白い皮膚で頭髪は乱れて垂れ下がっていた。乗黄と呼ばれる野獣がおり、その形状は一般的な狐のようで、背面には角があった。乗黄に乗る事が出来たら二千年の長寿が得られると言われていた。”とあります。
この白民国には不思議な生き物がおり、その背に乗ると寿命が増えると言います。博物誌にも白民国には乗黄がおり、狐に似て背の上には角があり、乗ると寿命が三千年増えると書かれています。
この話は徐々に変化を遂げ、明代の徐応秋の玉芝堂談芸の十巻黄金易五臓には、”白民国の人々は玉のように白い。国中に五穀はなく、ただ玉を食べる。玉が葉を出すと軟らかくなり味は甘く脆い。客人をもてなす時には膏露を玉屑に浸すと程なくして美酒となる。一升飲むと三年で酔いが醒めだす。人々は千歳まで生きる。”とあります。
乗黄に関しては以下をご覧ください!
中国神話の奇妙な狐の怪物を集めてみた。怪狐特集1(蠪侄、獙獙、朱獳、乗黄)
山海経海外西経に関しては以下をご覧ください!
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毛民国(もうみんこく mao2min2guo2 マイミングオ)
毛民国は山海経中に記載が見られる国家であり、その国民の姓は依であったと言います。
山海経の大荒北経には、”毛民国があり、そこに住む人の姓は依であり、黄米を食べ、四種の野獣を飼いならしていた。大禹は均国を生み、均国は役采を生み、役采は修鞈を生み、修鞈は綽人を殺した。大禹は綽人が殺されたことを哀しみ、密かに綽人の子孫のために国を作った。その国は毛民国であった。”とあります。
一方で、山海経の海外東経にも記載が見られており、”毛民国はその北面にあった。そこに住む人々は全身長い毛でおおわれていた。別の言い方をすると、毛民国は玄股国の北面にあった。”とあります。
毛民国の祖先は綽人という人物ですが、綽人は大禹の子孫に殺されてしまいました。そこで大禹が綽人の子孫のために国を作ったのが毛民国と言う訳です。そしてその国の住民の容姿も奇怪で全身が長い毛で覆われていたと言います。
禹に関しては以下をご覧ください!
山海経大荒北経に関しては以下をご覧ください!
山海経海外東経に関しては以下をご覧ください!
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