中国神話の不思議が詰まった神様達。神様特集4(危、大行伯、禺号、女媧腸、陽侯、肝榆屍)

中国神話の神様特集のその4です。この中の禺号は中国神話ではよく見られる混同や通仮字などで名前が増えた神です。禺猇や禺強などが派生した神だと思われます。

危(き wei1 ウェイ)

危は中国神話中に出てくる神様であり、神殺しの大罪人です。

危は山海経の海内西経に記載が見られており、”貳負の臣を危と言った。危と貳負は協力して窫窳(あつゆ)を殺した。天帝は貳負を疏属山中に拘禁し、その右足を刑具の上に載せ、自分の頭髪で貳負の両手を縛り山上の大樹の元に縛り付けた。この地方は開題国の西北面にあった。”とあります。

窫窳に関しては以下をご覧ください!

蛟龍、虬龍、燭龍、蟠龍、窫窳など様々な龍たち:中国の神獣、四象、霊獣特集

危が殺した窫窳はその後の物語が描かれており、霊山十巫達により復活したと言います。その時の様子が山海経に書かれており、”開明獣の東面には巫師神医である巫彭、巫抵、巫陽、巫履、巫凡、巫相がおり、彼らは窫窳の屍体周囲を囲んでおり、手に不死薬を捧げ死気に逆らって窫窳を復活させようとしていた。窫窳は蛇身人面で貳負とその臣下の危により殺された。”とあります。




窫窳は元々穏やかな神様でしたが生き返った後は悪龍となり、崑崙山付近を荒らしまわったと言います。

貳負に関しては以下をご覧ください!

中国神話の不思議が詰まった神様達。神様特集1(嘘、弁玆、石夷、柏子高、不廷胡余、慶忌、折丹、勾陳、貳負)

霊山十巫に関しては以下をご覧ください!

霊山十巫:死んだ神をも生き返らせる中国神話中の神医たち

山海経海内西経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,11 海内経海内西経編

出典:山海経

大行伯(だいこうはく da4xing2bo2 ダーシンボー)

大行伯は山海経の海内北経中に記述が見られており、”大行伯という神がおり、手に長矛を握っていた。大行伯の東面には犬封国があった。貳負の屍は大行伯の東面にあった。”とあります。

大行伯は手に長矛を持っている神として描かれています。

貳負は神様ですが部下の危と共にこちらも神様である窫窳を殺した大罪人です。貳負はその後天帝に誅殺されています。

貳負に関しては以下をご覧ください!

中国神話の不思議が詰まった神様達。神様特集1(嘘、弁玆、石夷、柏子高、不廷胡余、慶忌、折丹、勾陳、貳負)

山海経海内北経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,12 海内経海内北経編

出典:baidu

禺号(ぐうごう yu2hao4 ユィハオ)

禺号は禺猇とも書き、神話中に出てくる海神です。山海経中に記載が見られていますが、似たような名前の神様が沢山出てくるのでかなりややこしい神様でもあります。

山海経の大荒北経には、”儋耳国があり、そこに住む人の姓は任であり、神人禺号の子孫で谷米を食べた。北海の島嶼の上に神人がおり、人面で鳥の体であり、耳には二条の青蛇をかけおり、脚の下には二条の紅蛇を踏んでいた。名を禺強と言った。”とあります。

さらに大荒東経には、”東海の島嶼の上に神人がおり、人の顔で鳥の体をしていた。耳には二条の黄色の蛇を掛け、足の底には二条の黄色の蛇を踏んでいた。名を禺猇と言った。黄帝は禺猇を生み、禺猇は禺京を生んだ。禺京は北海に、禺猇は東海に住んでおりどちらも海神である。”とあります。




これらの文中には禺号、禺強、禺猇、禺京が登場しますが、他にも似たような名前で禺疆と言う名前もあります。これらはもともと一人の神様から分かれて成立したとも考えられます。

その中で禺号は現在では東海を司る海神とされています。

禺強に関しては以下をご覧ください!

禺疆:海神であり風神でありさらに疫病を運ぶ瘟神でもある人面鳥身の神様

山海経大荒北経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,17 大荒経大荒北経編

山海経大荒東経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,14 大荒経大荒東経編

一方で、山海経の海内経には、”帝俊は禺号を生み、禺号は淫梁を生み、淫梁は番禺を生み、この番禺が最初に舟を発明した。番禺は奚仲を生み、奚仲は吉光を生んだ。この吉光が最初に木を使って車を作り出した。”とあり、帝俊の子供として書かれていますので、詳細はよくわかりません。

帝俊に関しては以下をご覧ください!

帝俊:天帝でもともとは夔と言う神様な上、太陽と月の父親でもあった帝

山海経海内経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,18 大荒経海内経編

出典:baike

女媧腸(じょかちょう nv3wa1chang2 ニュゥワーチャン)

女媧腸は創造神である女媧の腸から生まれたとされる神様たちです。

山海経の大荒西経には、”十柱の神人がおり名を女媧腸と言い、女媧の腸が神に変わったためであった。栗広という原野に道を遮って住んでいた。”とあります。

晋の郭璞はこの一文に、”或いは女媧の腹である。”と注釈を加えています。

女媧は人類を生み出した女神であるという伝説もあります。女媧が世界を作った後に、泥を捏ねて人間を創り出したと言います。

女媧に関しては以下をご覧ください!

女媧:中国神話における創造神で人を始めとして様々な動物を作り出した女神

山海経大荒西経に関しては以下をご覧ください

山海経を読もう!No,16 大荒経大荒西経編

出典:baidu

陽侯(ようこう yang2hou2 ヤンホウ)

春秋の時期には孔子の弟子であった子羽が、持っていた白璧を河伯に狙われたと言う話が残っています。

ある時、子羽が白璧を身に着けて黄河を渡りました。河伯はこの白璧を手に入れようと思い陽侯を派遣して大波を起こし、さらに二条の蛟龍(こうりゅう)に命じて子羽の乗る船を襲わせました。子羽は左手で璧を守り、右手で剣を操りこの蛟を殺してしまいました。

この話の中では陽侯は河伯の部下といて書かれています。ところでこの河伯とはいったい何者かと言いますと、黄河を統べる神様です。黄河の神様は強欲であるようです。

河伯に関しては以下をご覧ください!

河伯:黄河を統べ河伯娶婦と言う悪しき風習の元凶となってしまった水神

出典:河伯

肝榆屍(かんゆし gan1yu2shi1 ガンユィシィー)

肝榆屍は山海経の中に記載が見られますが、具体的な形状や特徴などは書かれておらず、道しるべのようなポジションになっています。

山海経の海外東経には、”奢比屍国は大人国の北面にあり、そこに住む人々はみな野獣の体に人の顔をしており、耳が大きく、耳に二条の青蛇を掛けていた。別の言い方をすると、肝榆屍神は大人国の北面にいた。

君子国は奢比屍国の北面にあり、そこに住む人々は衣服を着て帽子をかぶり帯剣しており、野獣を食べた。二頭の花紋虎を身辺に置き、人のために遠慮して譲ることを好み争わない。そこには薫華草があり、早朝に開花し晩にしぼむ。別の言い方をすると、君主国は肝榆屍神の北面にあった。”とあります。

この文中には、肝榆屍は大人国の北側にいて、肝榆屍の北には君主国があったとされています。

山海経海外東経に関ては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,9 海外経海外東経編

出典:baidu

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