古代中国怪鳥特集の第四弾目です。奇妙で不思議な鳥が多いですが、今回は灌灌、鵷雛、鸓鳥、鳧徯、羅羅鳥、大鶚と鵕鳥、鶉鳥をご紹介いたします。
灌灌(かんかん guan4guan4 グェングェン)
灌灌は古代中国伝説中の鳥の名前です。
灌灌は山海経の南山経に記載が見られており、”さらに東へ三百里に青丘山があり、山の南陽面では玉石(翡翠)を多く産出し、山の北陰面では青雘(せいわく:青色の鉱物顔料で藍銅鉱などと推測されます。)が多く産出した。山中に野獣がおり、その形状は狐のようで九本の尻尾はあり、鳴き声は赤ちゃんの泣き声に似ていた。人を食べることがある。この野獣の肉を食べた者は妖邪毒気を受け付けなくなるという。山中にさらに禽鳥がおり、その形状はキジバトのようであり、鳴き声は人が罵り合うような声であり名を灌灌と言った。その羽毛を身につけておいた者は惑わされなくなるという。”とあります。
青丘山は有名な九本の尾を持つ九尾狐の住む山です。九尾狐自体は古くは瑞獣、つまりおめでたい獣として考えられていましたが、封神演義などの創作により邪悪なイメージが纏わりつくようになりました。
山海経南山経に関しては以下をご覧ください!
出典:baidu
鵷雛(えんすう yuan1chu2 ユエンチュー)
鵷雛は古代中国では鳳凰もしくは鳳凰に近い鳥を指しています。このため、賢才もしくは高貴な人物の例えとして用いられる場合があります。
《庄子・秋水篇》には以下のような話があります。
恵施は魏国で宰相をしており、庄子は彼に会いに行った。ある人物が恵施に対して、”庄子が梁国へ来た時、あなたの宰相の地位にとってかわりたいと言っていました。”と言うと、恵施は庄子を非常に恐れて国中を三日三晩探し回った。庄子は恵施の前に行きこう言った。”南方に鳥がおり、名を鵷雛と言いますがご存知でしょうか?鵷雛鳥は南海から飛び立ち北海へと去ります。梧桐以外には生息せず、竹の果実以外は食べず、甘美の泉水しか飲みません。ある時、一羽のフクロウが一匹の腐った鼠を得て、その前を鵷雛が飛び去りました。フクロウは鵷雛を仰ぎ見て横取りされるのではないかと怒声を発しました。あなたの行いはまさにこれと同じで、私が魏国の宰相と言う鼠のような地位を欲しがっているとして私を恫喝しているのですか?”と言ったという。
庄子は自身を鵷雛に例え高潔な志を表しました。並びに官職にしがみつく小人をフクロウに例えました。このことから鵷雛は高潔な人物の比喩として用いられるようになりました。
また、鵷雛が梧桐にしかとまらず竹の実しか食べないという記述は鳳凰の生態と同様です。このことからも鵷雛と鳳凰は同じ種の神鳥であるとされています。
鵷雛は山海経にも記述が見られ、南山経には、”さらに東へ五百里に南禺山があり、山上からは金属鉱物と玉石が多く産出され、山下は至る所に流水があった。山中には洞穴があり春になると水は洞穴に流れ込み、夏になると洞穴から流れ出した。冬には入り口ふさがって水が流れなくなってしまった。佐水はこの山より流れ出し、東南へ向かい大海に注いだ。佐水が流れる地方には鳳凰と鵷雛(えんすう)が住むと言う。”とあります。
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鸓鳥(るいちょう lei3niao3 レイニャオ)
鸓鳥は小飛鼠でムササビに似ており、前後の脚の間には大きな膜がついています。尾は長く、木々の間を滑空でき、夜行性だと言われています。
鸓鳥は山海経の西山経に記載が見られ、”さらに西へ二百里に翠山があり、山上には棕と楠が生い茂っており、山下には至る所に竹叢があった。山南面からは黄金や玉を産出し、山北面には牦牛、羚羊(れいよう)、麝が多くいた。山中の禽鳥は大部分が鸓鳥であり、形状は一般的なカササギに似ているが紅黒色の羽毛に二つの頭が有り、四本脚で人が飼うと火を避けること出来たと言う。”とあります。
鸓鳥は二つの頭と四本の脚をもつという、二羽の鳥を合わせたような不思議な形状をしています。
鸓という漢字字体にはムササビの意味があるので、ムササビのことを指しているのか、ムササビが鸓鳥に似ていたことから鸓と呼ばれるようになったのか謎が残ります。
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鳧徯(ふけい fu2xi1 フーシー)
鳧徯は戦争の兆しとされている凶鳥で、鹿台山に住むとされています。
さらに西へ二百里に鹿台山があり、山上からは白玉が多く産出され、山下からは銀が多く産出された。山中の野獣は■牛、羬羊、白豪が多く住んでいた。山中には禽鳥がおり、形状は一般的な雄鶏であるが人面で名を鳧徯と言い、鳧徯の名はその鳴き声に字を当ててつけられた。一度出現すると天下に戦争が起こったと言う。”とあります。
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羅羅鳥(ららちょう luo2luo2niao3 ルオルオニャオ)
羅羅鳥は菜山に住み人を食べるという恐ろしい鳥です。
山海経の西山経に記載が見られており、”さらに西へ三百五十里に、菜山があり、山中の樹木の多くは檀樹とカジノキであった。禽鳥の多くは羅羅鳥で人を食べた。”とあります。
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大鶚と鵕鳥(たいがく しゅんちょう da4e4 jun4niao3 ダーヲー ジュンニャオ)
鶚の鶚はミサゴと言う鳥の名称であり、魚を捕って食べることから魚鷹の異名を持っています。しかし、中国神話中では大鶚は欽丕と言う神様が死後に変わった怪鳥として描かれています。
の鵕鳥はもともとは鼓と言い、燭陰の子で父親と同じ人面龍神でした。
この欽丕と鼓は共謀して天神葆江を殺したと伝えられています。
大鶚は山海経の西山経中に記載が見られており、”さらに西北へ四百二十里に鐘山があり、その山神の子は鼓と言った。鼓の外見は人の顔に龍の体であり、かつて欽丕と共に崑崙山の南面で天神葆江を殺した。天帝はこのことで鼓と欽丕を鐘山の東面の■崖の場所で誅殺した。欽丕は大鶚に変わり、形状は普通のクマタカであるが黒色の模様と白色の頭部、紅色の嘴に虎の爪を持っていた。鳴き声は晨鵠と同じであり、出現すると大戦争が起こったと言う。鼓も鵕鳥に変わり、形状は一般的なハイタカであるが紅色の脚とまっすぐな嘴を持っていた。体には黄色の模様があり頭部は白色で、鳴き声は鴻鵠(こうこく)と似ていた。現れた地方はどこでも干ばつが起こったと言う。”とあり、天神葆江を殺した神殺しの欽丕が天帝により誅殺された後に変化してしまった悪鳥として書かれています。
さらに大鶚が出現すると大戦争が起こるという戦争の兆しとなる不吉な鳥でもあります。鼓は鴻鵠に似ており、干ばつの兆しとして書かれています。
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その他にも鶚の鳴き声は赤ちゃんの泣き声に似ているため、この声を使って人々をおびき寄せて捕まえてしまう怪物であるとも言われています。若水周辺に住んでいるとされ、魍魎の精霊とも言われています。
鶉鳥(じゅんちょう chun2niao3 チュンニャオ)
鶉にはうずらと言う意味がありますが、古代中国では鶉鳥は鳳凰の一種とも言われており、崑崙山に住んでいる鳥です。
山海経の西山経には、”山中にはさらに別の禽鳥がおり名を鶉鳥と言い、天帝の日常生活中に用いる器の装飾を主管していた。”とあり、天帝の様々な装飾品にその意匠が使用されていたことを伺わせています。
山海経西山経に関しては以下をご覧ください!
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