中国古代神話中には不思議な犬の怪物が多く現れます。形状も様々で翼を持った怪物まで出てきます。今回はそんな犬の怪物を集めてみました。
狡(こう jiao3 ジャオ)
狡は古代中国の犬のような怪物です。
狡の記述は山海経の西山経に見られており、”さらに西へ三百五十里に玉山がありここは西王母の住まう場所であった。西王母の容貌は人と同じであるが豹と同じ尻尾と虎と同じ牙を持っており嘯叫を好んだ。ぼさぼさの頭髪の上には玉勝を戴いており天災歴と五刑残殺の気を主管した。山中には野獣がおり形状は普通の犬であるが豹の斑紋があり頭の上の角と牛の角は似ていた。名を狡と言い発する声は犬と同じであり、出現した国家はどこでも五穀豊穣となったと言う。”とあります。
文中に西王母が出てきますが、西王母は西にあると言う神々の住まう山である崑崙山の主です。
西王母に関しては以下をご覧ください!
山海経西山経に関しては以下をご覧ください!
出典:baidu
蜪犬(とうけん tao2quan3 タイチュエン)
蜪犬は人を食べると言う恐ろしい怪物です。
蜪犬は結構議論が分かれている怪物であり、四凶の窮奇(きゅうき)と同一ではないかと言う説もあります。それは、山海経の記述に由来します。
山海経の海内北経には、”蜪犬の形状は一般的な犬であり、全身は青色で人を食べるが、人の頭から食べ始める。窮奇の形状は一般的な虎に似ているが羽が生えている。窮奇は人を食べるが人の頭から食べ始める。まさに食べられている人の髪の毛が乱れている。窮奇は蜪犬の北面に居る。別の言い方をすると、窮奇は人を食べるときは足から食べ始める。”とあります。
文を読む限りでは蜪犬と窮奇は別々ですが、人の食べ方が両者とも頭から食べ始めると言うグルメな怪物です。この記述により蜪犬と窮奇は同一の怪物を指しているのではないかと言われています。さらに文中に”まさに食べられている人の髪の毛が乱れている。”とあり、あたかも食べられている場面を見ているようですが、これはその場面が書かれた絵があったと言われており、山海経はその絵の説明をしている文章なのです。
窮奇は恐ろしい怪物として語られており、帝堯(ていぎょう)の時代にその悪名を轟かせた四凶の一員です。結局は堯の後継者の帝舜(ていしゅん)により西方へと追放されてしまいます。帝堯と帝舜の時代は堯舜時代とも言われており、儒教ではなじみのある言葉です。
特に舜は親に対して忠孝を尽くした徳の高い帝であるとされており、儒教で目指すべき人物像であるとされてきました。
窮奇に関しては以下をご覧ください!
四凶(饕餮、窮奇、梼杌、混沌):中国神話中で暴虐の限りを尽くした凶悪な四凶神
帝堯に関しては以下をご覧ください!
帝舜に関しては以下をご覧ください!
舜:五帝に数えられる古代中国の名君で意地悪な親にも忠孝を尽くした帝
山海経海内北経に関しては以下をご覧ください!
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天犬(てんけん tian1qian3 ティエンチアン)
天犬は古代中国の怪物であり、山海経にその記述が見られます。
山海経の大荒西経には、大荒の中に鏖鏊鉅山があり、太陽と月が沈む場所であった。野獣がおり、左辺と右辺各一つずつ頭がついていた。名を屏蓬と言った。巫山の山があった。また壑山の山があった。さらに金門山があり、山上には黄姖屍という名の人がいた。比翼鳥がいた。白鳥の一種がおり青色の羽があり、黄色の尾があり、黒色の嘴があった。赤色の犬がおり、名を天犬と言い、天犬が現れた場所はどこでも戦乱に見舞われたと言う。とあります。
天犬が現れると戦乱が起こると言う不祥の兆しとされています。
文中に比翼鳥が出てきますが、こちらも不思議な鳥で、一羽では飛べませんが二羽集まると飛べるようになります。このため夫婦や無二の親友の代名詞として用いられている鳥です。
比翼鳥に関しては以下をご覧ください!
比翼鳥:翼が一本と目が一つしかない鳥だが二羽集まると飛べるようになる神秘的な鳥
山海経大荒南経に関しては以下をご覧ください!
出典:山海経
従従(じゅうじゅう cong2cong2 ツォンツォン)
従従は犬のような化け物であり、山海経の東山経には、”さらに南に三百里に栒状山があり、山上には豊富な金属鉱物と玉石があり、山下には豊富な青石碧玉があった。山中には野獣がおり、形状は一般的な犬のようで、六本の足があり、名を従従と言い、その名は鳴き声に字を当てることで名付けられた。”とあります。
この中では従従は六本脚の怪物として描かれています。
出典:山海経
獜(りん lin2 リン)
獜は中国伝説中の怪物です。
山海経の中山経には、”さらに東南へ三十里に依軲山があり、山上には杻(杏の一種)とカシが繁茂しており柤樹も少なからずあった。山中には野獣がおり形状は普通の犬だが虎と同じ爪を持っている上に体は鱗で覆われていた、名を獜と言い飛び跳ねばたつくことに長じている。その肉を食べると風痺病に罹らないと言う。”とあります。
その肉は薬効成分があるようで、痛風の予防効果があるとされています。
山海経中山経に関しては以下をご覧ください!
出典:baidu
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