中国神話の奇妙な鹿の怪物を集めてみた。怪鹿特集1(羆九、夫諸、麈、妴胡)

中国神話中には奇妙な鹿の怪物が多く出てきます。今回はそんな奇妙な鹿の怪物をご紹介いたします。

羆九(ひきゅう pi2jiu3 ピィジウ)

羆九は古代中国の怪物ですが、羆(ひぐま)と言う漢字が使われているので熊の怪物かと言うとそうではなく、鹿に似ています。




山海経の北山経には、”さらに北へ五百里に倫山があり、倫水はこの山より流れ出て東へ向かい黄河へと注いだ。山中には野獣がおり、形状は麋鹿(大型の鹿)に似ていたが肛門は尾の上面についていた。名を羆九と言った。”とあります。

また、儒林外史の第三十八回には、”郭孝子は目を見張り、眼前の山上にいる異獣を見つめていた。頭には角が一本あり、目が一つだけで耳の後ろにあった。その異獣の名は羆九と言った。”とあります。

山海経北経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,3 五蔵山経北山経編

出典:baidu

夫諸(ふしょ fu1zhu1 フジュー)

夫諸は四本角の鹿で性格は温厚でよく角を突き合って遊んでいます。しかし、夫諸が出現すると大洪水が起こると言う洪水の兆しとなっています。

山海経の中山経には、”中央第三列山系について。萯山山系の首は敖岸山と言い、山南面からは【王雩】琈玉が多く産出され、山北面からは赭石や黄金が多く産出された。天神である燻池はここに住んでいた。この山からは常に美玉が生まれ出ていた。山上から北を向くと奔騰な黄河と青々とした叢林を望め、その形状は茜草とニレの木のようであった。山中には野獣がおり、形状は一般的な白鹿で四本の角があり、名を夫諸と言い、出現した地方はどこでも水害が発生したと言う。”とあります。

夫諸の白い鹿と言う形状は先秦時代から見られています。

山海経中山経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,5 五蔵山経中山経編

出典:baidu

麈(しゅ、おおじか zhu3 ジュゥ)

麈は古代中国の怪物ですが、もともとは大型の鹿を指していたと考えられています。

麈の記述は山海経に見られ、大荒南経には、”栄山と言う山があり、栄水はこの山より流れ出た。黒水の南岸に大黒蛇がおり、麈鹿(大型の鹿で尻尾は箒として利用されていた。)を丸呑みしていた。”とあります。




この文中では麈鹿は大蛇に捕食されてしまっています。

山海経大荒南経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,15 大荒経大荒南経編

麈鹿は中山経には麈鹿と麈として出てきます。現在ではこれらは同一の種を指していると考えられています。

さらに、山海経の中山経には、”さらに東北へ百四十里に崃山があった。江水はこの山より流れて東へ向かい長江へ注いだ。山南面からは黄金を多く産出し、山北面の至る所に麋鹿と麈がいた。ここの樹木の大多数は檀と柘であり、草の大多数は野薤菜(らっきょう)と野韮菜(ニラ)で、さらに多くの白芷(ビャクシ)と寇脱があった。”とあります。

この他にも中山経中では麈が結構出てきますので、古代では割とよく見られていたと考えられています。また、鹿の尾は埃を払う箒としても用いられていたので埃を払う箒を麈尾とも言います。

山海経中山経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,5 五蔵山経中山経編

出典:baidu

妴胡(えんこ yuan4hu2 ユエンフー)

妴胡は古代中国の怪物です。

山海経の東山経には、”東方第三列山系の首は屍胡山と言い、山上から北を向けば(歹羊)山が望める。山上には金属鉱物と玉石が豊富にあり、山下には酸棗の木が繁茂していた。山中には野獣がおり、形状は麋鹿に似ているが魚と同じ眼を持ち、名を妴胡と言った。妴胡の名はその発する声に字を当ててつけられた。”とあります。

また、清の郝懿行は、嘉慶五年に琉球へ行った帰りに馬歯山に停泊しました。当地の人は二頭の鹿を献上しましたがその姿は毛は浅く目は小さくて魚のような眼でした。使者が言うにはその鹿は海魚の変化したものであると言うことでした。郝懿行はこの生き物が妴胡であると気が付いたと言います。

山海経東山経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,4 五蔵山経東山経編

出典:baidu

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