貔貅(ひきゅう pi2xiu1 ピーシウ)
貔貅は避邪や天禄とも言い、中国の古代より語り継がれている伝説の凶猛な瑞獣です。貔貅は肛門がないため天下の財を飲み込むが漏らさず、神通特異であるために財を招き宝へ進み、四方の財を吸納すると言う意味を持っています。同時に邪気を避けるので身に帯びると幸運に恵まれると言います。このため貔貅は古代五大瑞獣の一つとされています。因みに残りは龍、鳳、亀、麒麟です。
中国古代の風水学者たちは貔貅は禍を転じて福と為す吉瑞の獣としました。古来より帝王から百姓までみな貔貅を注意深く大切に扱いました。貔貅は招財を除いて開運、避邪の効能の他に、鎮宅、化太歳(太歳、太歳聖君とも。木星の事で古来より無病息災を願いました。)、婚姻促進など様々な効能があります。
中国には伝統的に貔貅を装飾に使用する習慣があります。貔貅の意味することは沢山あり、人々は貔貅を身に着けると幸運に恵まれると信じていました。さらに、古代には貔貅を軍隊の呼称としても用いていました。
- 神話中の貔貅
貔貅の別名は実は三つあり、避邪、天禄、百解で合わせて四つの名前があります。貔貅の見た目は、龍頭、馬身、麟脚で獅子に似ており毛の色は灰色で飛ぶことができます。貔貅は凶猛威武で天上で巡視を行い妖魔鬼怪、疫病疾病天庭の擾乱などを阻止しています。
言い伝えによると、貔貅は龍王の九太子でその主食は金銀珠宝ですが、自然と全身に宝気が満ち、同じく吉祥獣である三脚の蟾蜍(ヒキガエル)などに比べて評判がよかったので玉皇大帝と龍王の寵愛を受けました。しかし、食べ過ぎていつもお腹をこわしており、さらに悪いことに耐えきれない時は所かまわず排泄してしまいましたので玉皇大帝は怒り、罰を与えるために貔貅の肛門を閉じてしまいました。このため、金銀珠宝は食べても体の外に排出することが出来ないようになったといいます。
この故事から貔貅は招財進宝の祥獣とみなされるようになり、以降中国の文化に深く根付き、今でも多くの人々が貔貅を形どった製品を身に着けています。
- 貔貅の外見
貔貅は虎や豹に似た胴体をしていますが、その首と胴体は龍に似ています。色は金色や玉の色も混ざっていますが、飲み込んだ金銀珠宝に応じて色が変わります。肩には一対の翼がありますが広げることはできません。頭部には角が一本生えていますが、前ではなく後ろ向きに伸びています。
多くの人は貔貅はパンダであると認識しています。《史記・五帝本紀》には、4000年以上前、黄帝は虎、豹、貔貅などの猛獣を飼いならし軍に加え、阪泉(今の河北省涿鹿県)で炎帝を打ち破ったといいます。貔貅は古代には二種類いたと言い、すなわち単角の貔貅と双角の貔貅です。ある人は、単角と双角は父(貔と言う)と母(貅と言う)で区別したと言います。さらに、善悪で分けていると言う人もいます。今となってはどちらかはっきりとはわかりませんが、現在では圧倒的に単角の貔貅が多く、双角の貔貅を見ることは滅多になくなりました。
貔貅は元々は麒麟などと同様に雄を貔、雌を貅とされていました。また、古代には単角を天禄、双角を避邪と称し、両角が主でした。また、貔貅は勇猛な戦士を指しており、三国志を題材にした京劇《失街亭・空城計・斬馬謖》中で、諸葛亮が、”その主貔貅を統べる。”とあり、この場合は貔貅は雄師、即ち百万の精鋭軍を意味しています。
また、中国の南方には、この貔貅を”怪獣”や”四不像”などと呼ぶ人たちもいます。中国の伝統には貔貅を装飾に用いる習慣があり、貔貅は龍、鳳、麒麟と並んで特に人気が高く人々にその装飾を身に着けると幸運が訪れると信じられています。
芸術でも工芸でも貔貅を形作るのは人々の想像により生み出されますので、実在する貔貅の装飾は千差万別で様々な形状があります。各王朝ごとの貔貅で共通している点は、短い翼があり、双角で巻尾があり、鬣が胸の前から背中にかけて繋がっており、突出した目に長い牙を持っていることです。姿勢は口に玉銭(丸い硬貨)をくわえているか玉銭の上に臥せている姿が多いです。人々は貔貅の玉銭もしくは尾に赤い糸を通して身に着けています。
- 貔貅の神獣としての寓意
古くは貔貅には肛門がないため金銀財宝を食べた後に排出できずに体内に宝を貯め込んでいくと考えられていました。しかし、イメージは次第に変化していき今では肛門など全ては備わっているが、消化能力がないため食べた財宝は消化されずに直接体外に排出されてしまいます。そして自身の排泄物は食べないためお供えしている人のために財富をもたらすというのが現在の解釈です。
また、貔貅の獅に似ており翼がある姿は古代の絹織物や軍旗、帯鈎、印紐、鐘紐などに彫刻、装飾されており主を守護し災いを避ける意を持っていました。
- 古書籍に記載されている貔貅
貔貅は古くから知られており、様々な書物にその名が見られます。《漢書》”西域伝”には、”烏矛山離国に桃抜、獅子、犀牛がいた。”という記述があります。この記述に対して孟康は、”桃抜、符抜とも言い鹿に似ているが尾は長い。独角の者は天鹿と言い、両角は辟邪と言う。”と注釈を書き加えています。この辟邪は貔貅の事を指しています。
古書に記載されている貔貅は猛獣であり古代五大瑞獣の一つであり招財の神獣です。その他の瑞獣は龍、鳳、亀、麒麟となります。最も古い貔貅は両種氏族のトーテム(部族と図柄などを結び付けて信仰する)であったと考えられています。伝説によれば、炎帝と黄帝を補佐し戦功を上げたことにより”天禄獣”を賜り封ぜられました。この意味は天が福禄を賜ったと言う意味です。天禄獣は帝王の財宝を守ると伝えられており、皇室の象徴であり”帝宝”とも称せられます。一方で猛獣という性質により貔貅は”辟邪”とも称せられます。鳳は鳳凰の事で鳳が雄で凰が雌の事を指しています。
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中国古代の風水学者は貔貅を災いが転じて福となす吉瑞の獣と認識していました。しかし、古代の詩人は貔貅を凶に例えている場合も見られます。
司馬遷の史記・五帝本紀には、”軒轅が熊、羆、貔、貅、貙、虎に教え、以って炎帝と阪泉の野で戦った。”とあります。この一文に対して司馬貞は、”これら六猛獣に戦いを教えて戦いに加えたのだ。”と考察しています。軒轅は黄帝の名で神話時代中盤に中原を統一した偉大な帝王です。徐珂は《清稗類鈔・動物・貔貅》で、”貔貅は虎に似ているとも熊に似ているとも言われており毛の色は灰白で、遼東の人は白熊と呼んだ。雄を貔、雌を貅と言ったので昔の人はよく列挙したのだ。”と書いています。
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炎帝神農氏:フーテンの寅さんと中国の妖怪退治で有名な茅山道士には意外な接点があったことが判明
- 周武王と貔貅の伝説
貔貅は三百万年以上前には西蔵で生活していました。四川の康定のさらに西域にいる猛獣で極めて高い戦闘能力を備えていたと言います。姜子牙(太公望)が武王を助け紂王を討伐した年に、行軍の途中で偶然に貔貅を見ました。しかし、その時は誰も貔貅の事を知らず、姜子牙はその凄まじい威猛に感じ入り何とかして貔貅を手懐けて自身の騎乗としました。その後、貔貅に乗り戦うと連戦連勝を重ね、この勇猛無比な戦いぶりを見た周の武王は姜子牙を”雲”という官に封じました。ある時、姜子牙は貔貅は毎日驚くほどの食事をするのに排泄をしないことに気が付きました。唯一の排泄と言えば全身の毛皮から発する奇香無比な汗で、四面八方の動物はこの匂いを嗅ぐと貔貅を食べに先を争ってやってきますが、逆に貔貅に食べられてしまったといいます。
- 明の初代皇帝朱元璋と貔貅
朱元璋は南京を首都に定めると地面から一対の貔貅が掘り起こされました。この時の貔貅は龍王の龍生九子として考えられており、このため霊谷寺のそばに貔貅殿を建立しその一対の貔貅を奉じました。朱元璋は南京の都を作りましたが、財政は底をついておりこのため丞相(風水師とも)の劉伯温は朱元璋に貔貅を用いて納財を促進するように建議しました。これを聞くと朱元璋はその巨大な一対の貔貅を世に放ちました。その結果黄河から長江に到るまで名士たちは次々に寄付を行ったと言い、朱元璋はその臣民の忠心に大いに感じ入ったと言います。
出典:baidu
今回は招財の神獣である貔貅のお話です。貔貅に似ている神獣に獬豸(かいち)や望天吼(ぼうてんこう)、獅子などがいるので混乱してしまいますが、お金の上に乗っていてさらに角が後ろの方に伸びているのが貔貅です。獬豸も似た感じで後ろに伸びていますが途中で上部へ向きを変えて伸びています。貔貅はお土産などとしても人気がありますので、チャイナタウンなどに行くとよく見かけます。
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貔貅と共に意外にチャイナタウンでよく見かけるのが三国志の関羽だったりします。これは関羽が道教で神様として祀られているためです。また、同じく死後に神として祀られている人に張天師がおり、こちらの方は漢中の五斗米道を率いた張魯の祖父で五斗米道の創始者です。三国志中では関羽は張魯など眼中にない獅子奮迅の活躍を見せますが、道教中の物語では張魯の祖父の張天師に召喚され旱魃と言う日照りの神と戦わされたりちょっと不遇な存在になってしまっています。一応道教では張天師の方が地位は高いんですね(;´∀`)
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旱魃:美しい女性から恐ろしいキョンシーにまで変わってしまった悲劇の天女
道教に関してもっと言うと、キョンシーなど中国の妖怪退治に欠かせないアイテムにお札がありますが、このお札の研究を行いお札理論の基礎を作り上げたのがこの張天師なのです。意外なところで点と点がつながり楽しいですね( ´∀`) ちなみに妖怪と戦っている道士は茅山道士(マオシャン)と言い、茅山という山は道教の聖地となっています。香港のホラー映画のクレジットを見ているとたまに茅山道士の名が見られます。
キョンシーに関しては以下をご覧ください!
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