雷獣:常先に太鼓のバチにされてしまった可哀そうな神獣

雷獣(ライジュウ lei2shou4 レイショウ)

雷獣は雷電を放つ力を持つと言われる中国の伝説上の神獣です。元々は黄帝(こうてい)の時代に捕らえられてその骨を太鼓のバチとして用いられたと言う可哀そうな神獣でもあります。

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伝説では黄帝と蚩尤(しゆう)とが中原の覇権を争った涿鹿の戦い(たくろくのたたかい)の戦いという神話史上最大の激戦がありました。この戦いの前には黄帝は蚩尤に連戦連敗でしたが、涿鹿の戦いでは大勝利を上げています。この戦いの勝因の一つに太鼓を用いたことが挙げられます。




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神獣を巻き込んだ古代中国最大の激戦、涿鹿(たくろく)の戦いとその結末

黄帝の部下に常先(じょうせん)がいました。玉皇大帝が九天玄女を遣わして黄帝に《兵書》を送った帰りに九天玄女は大きな木の下で常先が昼寝をしているのを見ました。常先はすでに太鼓の原型を作っていましたが、太鼓に適した皮と太鼓をたたくバチが見つからないことに悩んでいました。九天玄女はこれを知り常先と話をしようと思いましたが、凡夫と話すことは禁じられていたため、夢に託すことにしました。

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九天玄女は夢の中で東海にある流坡山の山中に怪獣がおり、牛のようであるが長い角はなく一本足で、平時は活動せずに大人しいがいったん出現すると海上には暴風雨が巻き起こると言う夔(き)という神獣の事を教えました。夔の両眼は光を放っており太陽と月と同じ光であると言います。この神獣の皮を用いることで遠くまで響く太鼓を作ることができると言いました。

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次に九天玄女はバチについての情報も与えました。バチに適した神獣は雷澤にいると言う雷獣の骨です。雷澤は雷公(らいこう)が住むとも言われている場所で、雷公は三皇の筆頭である伏羲(ふっき)の父親であると言う伝説もあります。

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雷公:雷公、雷神(比較級)、雷王(最上級)、雷神の三段活用

雷獣は一度咆哮するとその声は雷よりも大きく、毎日気ままに過ごしており、仰向けに寝そべってくつろぐことを好んでいたと言います。そして爪で腹をつつくと音が鳴り、それを音楽のようにして奏でていました。さらに腹を叩くと巨大な雷が起こったと言います。

九天玄女はこの夔牛の皮で蒙鼓(軍事用の太鼓)を作り雷獣の骨で鼓槌を作ると、地を動かし山をも揺るがす並ぶもののない威力の太鼓が完成するであろうと言いました。

夢から覚めた常先は早速黄帝に報告をし、夔牛と雷獣の捕獲へ向かい捕獲の後に見事に80面の太鼓を完成させました。涿鹿の戦いの際はこの太鼓が効果を発揮し蚩尤軍に勝利して黄帝は中原に覇を唱えました。

この話は山海経にも記載されており大荒東経には、”東海には流波山があり、この山は東海に入る七千里に地方にあった。山には野獣が住んでおり、形状は普通の牛のようで体は青蒼色をしており角は無く、蹄があった。海水に出入りするときには大風大雨を伴い、その身体から発する光は太陽や月と同じでその咆哮は雷鳴と同じであった。名を夔と言った。黄帝は夔を得て、その皮で太鼓を造り、雷獣の骨で造ったバチでその太鼓をたたくと、雷鳴のような声が五百里の外まで響き渡った。これを用いて天下に威を示した。”とあります。

大荒東経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,14 大荒経大荒東経編

出典:baidu

今回は雷獣のお話です。雷獣は個人的なイメージですが結構重要な存在のように感じましたが、中国神話を通しても涿鹿の戦いでバチにされたくらいしか登場していません。どちらかと言うと雷公や雷神などは伏羲の父親であったり、後世に道教に取り入れられてから発展していきました。

雷獣は神話上では雷公とかぶってしまっているのであまり重用されなかったのかと想像します。

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