閻羅王:中国の閻魔大王は何と十人いたことが判明

閻羅王(えんらおう yao2luo2wang2 イエンルオワン)

中国では閻魔王は実は十人います。日本人が閻魔大王と呼んでいるのは実はこの十人の中の一人で閻羅王の事です。閻羅王は地府第五殿の主の事を指しますが、実は地府には十殿があり十人の閻王がいるのです。閻羅王はその信仰されるようになった背景により他の閻王と比べて少し上位に扱われている印象を受けます。十殿閻王は第一殿から順に秦広王、楚江王、宋帝王、五官王、閻羅王、卞城王、泰山王、都市王、平等王、転輪王です。

  • 閻王について

閻魔王はもともとインド神話に由来し、初期の仏教とインドの神話の中で冥界の唯一の王でした。仏教神話中では冥界の王は閻摩羅王と称されます。仏教が古代インドから中国へ伝わった時、閻王が地獄の主であるという考え方が広がりました。中国語の閻王は梵語の発音に合わせた漢字です。閻王は人の魂の輪廻を司っており、人の死後に魂が陰間に行き生前の行いに関して閻王の審判を受けます。

この仏教が中国へと入ってきた後、道教に影響を与え道教でもこの地獄の神の概念が取り入れられました。そして道教で拡大されてできたのが閻羅王です。道教中では歴史上の人物と十殿にいるその他の閻王とを結びつけて発展させています。




中国の仏教もこの道教で発展された十殿閻王の概念を逆輸入する形で取り入れたため、中国では十殿の概念が広く浸透することとなり、これに伴い閻王も十人に増えました。第五殿の閻羅王は北宋時代の清官として名高い包拯の事を指しています。この閻羅王は死後の人間を裁いています。

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  • 仏教における伝説

閻羅王は鬼世界の裁判官であると信じられており、諸鬼中の大王です。梵語中での別名は”双”であり、これは閻王の兄妹両人が共同で鬼たちの世界を統治していると考えられているためです。兄の閻王は男の鬼を治め、妹の閻王は女の鬼を治めており女鬼の女王です。ただし、中国仏教僧侶は信徒に対しては閻王の妹の話はしません。これは仏教中では女性の地位は低くされており、これに不満を持った女性たちがこの閻王の妹の存在を持ち出して仏教改革を始められることを恐れたためです。

このため古くは閻王は一人だけであり、五人に仕事を分け、十八人が補佐をしています。しかし、唐の時代には天帝が閻羅王を封じ、五獄衛兵を統率させ、同時に地獄を十殿に分けてそれぞれに主を置き地府十王と称しました。十王はそれぞれ名がありますが、あわせて十殿閻王と称されました。

  • 仏教の閻羅王

仏教は古代インドで興り、バラモン教の神話などを取り入れて発展しました。仏教中の閻王の職責は陰間の諸神を統治し、生前の行いを裁くとともに懲罰を加えることです。仏教中では閻王信仰には二つの異なる説法があります。それは平等王や双王などです。




平等王は、中国古代の僧侶が仏教を翻訳した時、閻王を平等王と訳したことに起因します。その意味は閻王は賞善罰悪を行い公正で人々を平等に扱うということです。その後、平等と因果応報が結びつき、中国古代の最も影響がある民間信仰の一つになりました。

一方の双王は梵語中の耶摩(ヤマ)の訳で、二つの説があります。一つは閻王が地獄で身に苦痛を受け、二種の食べ物で楽しんだため双王と称された説です。別の説では、閻王は兄と妹の両人で地獄の死神と死者を統治していたという説です。兄は男の鬼を懲罰し、妹は女の鬼を懲罰しました。これに因んで双王と称します。

第一殿 秦広王蒋

第一殿の閻王は秦広王蒋で二月一日に生まれ、人間の短命生死を司り幽冥の吉凶を統括し、善人が寿命を終え、転生の判断をします。善行が勝っていると第十殿に送られ人間界へと転生していきます。この時男は女に、女は男に転生します。悪が勝っていると、殿の右にある高台いわゆる孽鏡台(げっきょうだい)に連れていき覗き込ませ、自身の悪行を見せられた後、第二殿に送られて地獄で苦を受けます。

第二殿 楚江王歴

第二殿の閻王は楚江王歴で、三月一日生まれで地獄を司ります。またの名を剥衣亭寒凍地獄と言い、別に十六小獄が設置されています。生きている間に人を傷つけたり強盗や殺人を犯した者はここに送られます。まずは十六獄の責め苦を受け、満期が来ると第三殿に送られさらに刑を受けます。

第三殿 宋帝王余

第三殿の閻王は宋帝王余で、二月八日生まれで黒縄大地獄を司ります。こちらも十六の小獄が設けられており、生前は年配者に逆らい尊大であり訴訟などを起こされたものはこの獄に送られ、逆さ釣りや目をくりぬかれたり骨を削がれたりします。刑が終わると第四殿へと送られます。

第四殿 五官王呂

第四殿の閻王は五官王呂で、二月十八日生まれで掌合大地獄を司ります。別名剥戮血池地獄といい、十六の小地獄が設けられています。これは年貢や税金を納めなかったり、詐欺を行った者が送られます。こちらも恐ろしい刑罰を受けた後、第五殿へと送られます。

第五殿 閻羅王包

第五殿の閻王は閻羅王包で正月八日に生まれ、ここに来る前には第一殿で無実の罪で死んでしまった者をもう一度現世へと送り返していたために第五殿へと降格させられました。叫喚大地獄を司り、十六の小獄があります。この殿に至る者は望郷台へと赴き親族がその罪に連座させられる様子を見せられたのち、悪事について詳細に調べられ小獄へと入れられて、心を取り出されて蛇に食べさせ、その首を斬られます。刑が終わると第六殿へと行きます。




第六殿 卞城王華

第六殿の閻王は卞城王華で三月八日に生まれ、大叫喚大地獄と枉死城、十六の小獄を管理しています。不孝者は二匹の小鬼に鋸で二つに切られてしまいます。天地を恨み北に向かって小便をしたものや泣いたものはこの地獄へと入れられます。悪事について調べられ、鉄の錐で打ち付けられ、舌を火で焼かれるという刑罰を受けます。刑が終わると第七殿へと行きます。

第七殿 泰山王董

第七殿の閻王は泰山王董で三月二十七日に生まれ、熱悩地獄を管理しています。またの名を碓磨肉醤地獄と言い、十六の小獄があります。現世で遺体から薬を作り、人を離散させるという罪を犯した者はここに送られます。刑が終わると第八殿に送られます。また、窃盗やありもしないことを言い立てたり、金銭をかすめ取ったり、財産を奪い取ったり命を害した者は油鍋の刑罰に処せられます。

第八殿 都市王黄

第八殿の閻王は都市王黄で四月一日生まれ、大熱大悩大地獄、またの名を悩悶鍋地獄と言い、十六の小獄があります。現世で親不孝や父母翁姑を煩わせたここに送られます。小獄で一通り刑を受け苦しみを味わった後には第十殿に送られ頭を交換され顔を変えられ畜生道に転生させられてしまいます。

第九殿 平等王陸

第九殿の閻王は平等王陸で四月八日生まれ、豊都上の鉄網阿鼻地獄を管理しています。ここには十六の小獄が設置されており、現世で殺人放火を犯したものがここへ送られてきます。空洞の銅柱を抱きかかえるように手足を縛り付け火で焼き心肝を焼いた後、阿鼻地獄で刑を受けます。被害者が全て転生を終えた後、第十殿に送られ六道に転生します。六道とは天道、人道、地道、阿修羅道、地獄道、畜生道の六つです。

第十殿 転輪王薛

第十殿の閻王は転輪王薛で四月十七日に生まれ、各殿で刑罰を受けた鬼魂を管理し、善悪に分別して等級ごとに分け四大部州に転生します。男女の寿命、富貴貧賎の詳細を記録して毎月第一殿に登録します。極悪の鬼は卵に変え、朝に孵化して暮に死ぬような短命にして罪を償わせ、その後また人間に転生させますが、蛮族の地に転生させます。転生する前には孟婆の元に行き、酴忘台の下で迷湯を飲み干させます。これにより前世の事を全て忘れて生まれ変わります。

孟婆に関しては以下をご覧ください!

孟婆:冥府で生まれ変わる人に忘却の薬湯を飲ませる不思議なお婆さん

出典:baidu

仏教の考えに六道輪廻があります。これは生き物は生まれ変わりを繰り返しており、生前善い行いをするとより高位の存在に生まれ変わり、やがて神様に転生するという考え方です。この輪廻転生は解脱といいますが、煩悩から解き放たれて涅槃に生まれ変わることが一つのゴールとなっています。生まれ変わる世界も天道、人道、地道、阿修羅道、地獄道、畜生道で、我々は人道に居り、もう少しで天道へと生まれ変わることができます。この解脱までの道のりは長く、前世で悪いことをすると容赦なく畜生道などに落とされてしまい、再び這い上がらなければなりません。

殺人を犯した人などは死後に第二殿に送られた後に十六獄の責め苦なるちょっと想像しがたい責め苦を受けます。その後は孟婆に孟婆湯を飲まされて記憶を消されますが、地獄の苦しみの記憶を忘れてしまうと来世で同じことをしてしまう可能性があるので地獄の意味がないのではないかと思いました…(;´∀`)

悪いことをした人は刑罰を受け、その後はスパルタンエックスやブルースリーの死亡遊戯みたいに一殿ずつ上がっていきますが、その拷問はもう切る煮る焼くという中華料理のフルコースにされてしまう勢いです。十殿にたどり着くころにはきっと美味しく仕上がっています(´;ω;`)

第十殿まで到達した後に再び人間として生まれ変わると、来世の死後もまた一殿に戻ってきた後に些細な悪事で再び地獄の責め苦を受ける可能性もありますし、涅槃の境地に至れる自信もないですし、正直生まれ変わりたくはないですね(´;ω;`)

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