相柳と浮遊:共工の忠実なしもべで洪水を起こす凶悪無比の悪神たち

共工(きょうこう)と言えば中国神話中で大暴れして天地を壊してしまった神として有名ですが、今回はそんな恐ろしい共工の部下の相柳(そうりゅう)と浮遊(ふゆう)をご紹介します。共工は黄帝(こうてい)の孫である顓頊(せんぎょく)など中国の正統な王に対して反乱を起こし、さらに凶悪な四罪(しざい)の一柱となるなど悪という評価が付きまとっており、その部下である相柳(そうりゅう)や浮遊(ふゆう)も悪人のように描かれてしまっています。

共工に関しては以下をご覧ください!

共工:治水で民に尽くしそして山をも真っ二つに割ってしまう狂戦士

黄帝に関しては以下をご覧ください!

黄帝:中国の始祖であり古代神話中最大の功労者

顓頊に関しては以下をご覧ください!

顓頊:黄帝の孫で中国古代の国家である華夏王朝の始祖。

しかし、共工に関しては上述の悪の側面と共に治水により民に尽くしたという伝説もあり、一概に悪とは言えない中国神話では珍しい存在です。このような二面性が見られるのはその他に旱魃(かんばつ)や夸父などが挙げられますが、いずれも中国神話中で大きな活躍が見られる神たちです。

旱魃は最初は青い衣を羽織った美しい天女で中国の正統な王である黄帝のためにこの上ない尽力したのですがが、いつの間にか死者が変わる妖怪になってしまいました。実はこれが中国で有名な妖怪であるキョンシーの由来の一つとなっています。

夸父に関しては以下をご覧ください!

誇父:弱きを助け悪を挫く太陽に立ち向かった伝説の巨人

旱魃に関しては以下をご覧ください!

旱魃:美しい女性から恐ろしいキョンシーにまで変わってしまった悲劇の天女

キョンシーに関しては以下をご覧ください!

キョンシーを徹底解説!中国のキョンシー実在調査のまとめ

共工の戦った相手は書物により異なりますが、結末は一緒で最後は敗北して激昂し、天の柱である不周山に頭突きしてこれを折ってしまいました。その後天地は傾き水の流れが変わったことで洪水が起こり、星や月の位置が変わり、どさくさに紛れて猛獣が跋扈しだすというまさにこの世の終わりの地獄絵図となってしまいました。その後天地は天地の創造主である女媧(じょか)により修復されています。この共工の戦いに相柳と浮遊も参加しています。




女媧に関しては以下をご覧ください!

女媧:中国神話における創造神で人を始めとして様々な動物を作り出した女神

相柳(そうりゅう xiang1liu3 シアンリゥ)

相柳はまたの名を相鍾といい、古代中国の伝説中の凶神です。共工の大臣で、《山海経・海外北経》にその存在が見られます。蛇の胴体に九つの頭を持っており無数の人を食べたと言います。相柳が行くところは湖沼になってしまうという伝説があります。

相柳の噴出する水は洪水よりも恐ろしく、苦くそして辛く、飲んだら命を落とすと言われています。このため、相柳の作り出した湖沼は毒の沼地となり、禽獣も生きていけない荒涼とした場所になってしまいます。五帝の一柱の禹は荒れ狂う相柳を見るなり神力を使って相柳を殺して害を取り除いたと言います。この時相柳の体から流れ出した血が大地に流れてしみ込み周辺地域まで拡大したため、その地方一帯は五穀が何も育たない不毛の土地になってしまいました。

そこで禹はこの泥を使って山間を塞ごうとしました。禹は多くの山間を塞ぐことで泥を取り除き、取り除かれた場所は池になりました。その後、各方面の天神が池の畔に高台を作り妖魔を鎮圧しました。

《山海経・大荒北経》には、”共工の臣で名を相鍾といい、九首蛇身、とぐろを巻き九土を食べた。行く所は沢になり、辛くないが苦く、百獣は生きられなかった。禹は洪水をふさぎ相鍾を殺し、その血は生臭く悪臭を放ち、その地は穀物は育たなくなった。その地は水が多く、人が住めなかった。禹は土を取り除き池とし、群帝はこれを以って台を作り、この場所は崑崙の北にあった。”とあります。

相柳は蛇身九頭、巨大で九座山頭にいて物を食べ、絶えず毒液を吐き出して池を作り出していました。水の味は苦渋で悪臭を放っていたと言います。その湖沼から放たれる悪臭により付近を通りがかった鳥や獣が死んでしまうほどでした。相柳は共工と共にあり、洪水で民百姓に害を与えていました。そこに治水を行っている途中の禹に出会い、戦いとなりましたが共工は敗北し、流刑のために監禁されました。




相柳は共工の意志を継ぎ妖怪を作り出したため、禹は相柳を殺しました。しかし、その血は生臭く、血が流れた地域一帯は五穀が育たない不毛の地になってしまい、口から流れ出た水は大きな毒液の湖沼を作り出しました。禹は三度湖沼を平らにしましたが三度とも陥没したため、きれいな大池に整理するために切り開き、天帝たちのために池の畔に宮殿楼閣を建て、衆帝の台と称しました。

山海経注に出てくる相柳と相鍾の出来事は同じことを表していると考えられています。このことから古の郭璞は相柳は相鍾のことである、と説明しています。

これまで書いた話に似ていますが、以下のような伝説もあります。

相鍾は蛇身でとぐろを巻いており、九個の頭部を持っていました。土を好んで食べ、一度九個の小さな山を食べてしまいました。相鍾が吐き出したものは形を成し湖沼になりました。その湖沼に行くと誰しも気分を悪くし、水は苦渋で野の獣も誰も寄り付きませんでした。

相鍾は河川の堤の土を食べてしまい、洪水を起こしてしまいました。四方に水は溢れかえり平地は水没してしまいました。その時、治水工事をしていた禹は前に自分が作った堤防を壊されてしまったので共工と相鍾を武力で鎮圧することを決めました。応龍と群龍の助力の元、禹は神威を奮い起こし、水神共工を倒し、共工を天庭に返しました。また、相鍾の罪は許しがたく誅殺してしまいました。

相鍾は処刑された後、大量の血を流し、この上なく生臭くその場所には作物は育たなくなりました。相鍾はその地方でも湖沼が多い場所をダメにしてしまい人々は住むべき場所を失ってしまいました。そこで禹は人を派遣し三度上から土をかぶせましたが、三度とも陥没しました。仕方なく禹はその地を掘り大きな池として、掘り起こした土を池の周りに積んで高台を作り諸神を祀りました。

出典:baidu

浮遊(ふゆう fu2you2 フーヨウ)

明の胡応麟は、《少室山房筆叢・九流諸論下》で、”晋の平公、朱熊の夢を屏風の前で見る。気分が悪くなり疾病にかかった。子産に問いて対して曰く。昔、共工の卿、浮遊が顓頊に敗れ淮で自害した。その色赤でその言は善を笑い、その行いは善を顧みて、その形状は熊の如し。”とあります。

これは、伝説によれば浮遊は共工の部下で、共工が顓頊に反乱を起こし失敗した後に自決して怨霊となりました。戦国時代には晋の平公が屏風の前で紅色の熊の夢を見ました。この後病気で臥してしまいました。平公は鄭国の子産にこの理由を尋ねました。子産はこのように答えました。

”遥か昔、共工の大臣である浮遊が謀反の失敗で自害しました。それ以降浮遊の化身が紅熊となり人間に害をなしていました。もし宮殿内で浮遊を見たのならば王政は乱れて崩れるという意味で、門で浮遊を見ると臣下が反乱を起こし、屏風の前で浮遊を見たなら大事は起こりません。あなたの病気は死に至りませんが、ただ顓頊と共工を魔除けとして祀ってください。”

その後、平公は子産の言に従うと病は治ったと言います。

もう一つの伝説は、共工が反乱を起こした有名な共工怒触不周山で共工の部下として戦った話です。物語の大筋は、共工が敗戦に怒り、天柱である不周山に頭突きをして折ってしまい、天地は大混乱に陥った、というものです。共工の戦った相手は顓頊、祝融、女媧で伝説により異なります。

特に祝融との戦いで相柳と浮遊の両者はその高い能力を発揮しています。祝融の宮殿を取り囲んだ共工軍は火神である祝融の宮殿の周りで燃え盛る神火を消すために相柳と浮遊に命じて三江五海の水を汲み上げて祝融の宮殿に向かって放水しました。すると大洪水が起こり神火は消えてしまいました。しかし、洪水が引くと神火は再び燃えだし、加えて祝融は風神に協力を頼み、風の助けで火勢は強くなり、共工に襲い掛かりました。




火炎は共工を直撃し、共工とその部下は大量の水でその火を消そうとしました。しかし、水は千里を速く流れており、留まっている場所がどこにもありませんでした。火焔は再び長い舌のように襲い掛かってきます。共工達は火に焼かれて全身黒こげで、大混乱に陥りました。共工は水軍を率いて戦いつつ退却し、大海まで逃げました。共工はここで祝融を大洪水にあわせるために水を満たしましたが、難しいと悟り退却しました。その後、共工は不周山を折ってしまいます。

さらに、共工が戦った相手は女媧であるという説もあります。伏羲(ふっき)の時代、華夏に共工の部落がありました。共工氏は天上の水神で、人面で蛇の体をしており、髪の毛は赤く性格は狂暴でした。共工の手下には二柱の悪名高い神がいました。一柱は九つの頭部を持った相柳(そうりゅう)で、人面で蛇の体、全身青色の残酷で貪欲は性格をしており、もっぱら殺戮を好みました。別の神は凶神で浮遊(ふゆう)で人の心が透けて見えたといい、この能力を使って人に蠱惑を施しました、という話です。その後共工軍は女媧により討伐されてしまいます。

浮遊の見た目に関しては調べた限りでは古い書物中には記載はありませんでした。

出典:baidu

中国神話一の石頭である共工の二人の部下のお話です。神話上ではどちらも悪として描かれています。中国の神話には絶対的な善である三皇五帝がいます。神話でよくみられますが、その正統性をもたらすために極悪な敵を出現させて戦いを繰り広げます。最終的に討伐して悪を倒したヒーローを演出します。倒すべき相手は絶対悪であり、戦いには大義がないと成立しない話ですので、共工もその部下である相柳と浮遊も人民に害をなす凶悪な敵として描かれています。

実際の歴史は勝てば官軍となりますし、歴史は勝者によって作られます。もし共工が勝っていれば共工が絶対正義となりますが、神話の主人公が変わるだけで大筋は変わらなかったでしょう。

しかし、頭が九個ある相柳の外見は彼岸島に出てきた亡者みたいです。なんか丸太で倒せそうですね(;´∀`)

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