古代中国には様々な奇妙な生き物が蠢いていたとされています。その中には魑魅魍魎など物や動物が怪物となってしまった場合もあり、人を襲うこともあったと言います。そのような怪物の中で今回は特に山の怪物、即ち山精を集めてみました。
山精(さんせい shan1jing1 シャンジン)
山精は古代中国伝説中の怪物です。山精に関する最も古い文献は淮南子・氾論訓であり、”山出梟陽”とあり、この一文に関して高誘は、”梟陽は山精なり。人の形をしており長大で顔は黒く身には毛があり、足は反踵(足が180°反対方向を向いている)で人を見て笑う。”と書いています。
この高誘の言う山精はおそらく赣(かん)という巨人のことを指していると思われます。山海経に記述が見られており、山海経の海内経には、”南方に赣(かん)という巨人がおり、人面で唇が長く黒い体に長い毛が深々と生えていた。足先は前後逆にかかとが前を向いており、人を見ると笑いだし、一旦笑うと唇が顔全体を覆ってしまい、人はその隙に逃げ出した。”とあり、巨躯であることや体毛、反踵、笑うなど山精との共通点が多くみられています。
海内経に関しては以下をご覧ください!
この山精は日本にも伝わっており、1779年に浮世絵師の烏山石燕が描いた今昔画図続百鬼の絵は梟陽を参考にして書かれたと思われています。
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邪魅(じゃみ xie2mei4 シエメイ)
邪魅とは祟りをもたらし人を害する鬼怪で、古くから恐れられていました。
晋の葛洪 は《抱朴子・至理》で、”ある所に邪魅山精がおり、人家を荒らした。”とあります。《雲笈七答》六十四巻には、”邪魅を排除すると寒さや熱さに耐えられ皮膚は湿潤になり頭髪には白髪は生えなかった。”とあります。
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鬼蜮(きよく gui3yu4 グイユィ)
鬼と蜮はどちらも暗闇から人を傷つける怪物であることにちなみ、鬼蜮は人を害する鬼と怪物を指します。また、暗闇から人を傷つけるような陰険な人物にも例えられる場合もあります。
清の時代の周亮工は《書影》第十巻に、”戦国の時代、君主に木偶が多く、その客は鬼蜮が多かった。”などと書かれており、古くから陰険で腹黒い人物の代名詞として用いられていました。
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賁羊(ふんよう ben1yang2 ベンヤン)
賁羊は伝説中の土中の怪物です。
晋の干宝は捜神記第十二巻に、”木石の怪、夔、蝄蜽。水中の怪、龍、罔象。”と書いており、《国語・魯語下》には、”土の怪は羵羊という。”とあります。《史記・孔子世家》には、”土の怪は墳羊。”とあり、晋の張華は《博物誌》の第九巻に、”土の怪は獖羊である。”と書いています。
漢字が少し変化していますが、賁羊が土の怪であることを示しています。
魑魅魍魎と言う言葉がありますが、この賁羊もこの一種であると考えられます。魑魅魍魎とは石や木、動物などが深い森の中で長い年月を経ると変化する怪物です。魑魅魍魎は鬼ですが、螭魅蝄蜽は虫が変化したものです。虫は古くは小動物全般を指す言葉でしたので、蛇や蜥蜴などが変化した怪物は螭魅蝄蜽となります。
魑魅魍魎に関しては以下をご覧ください!
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