今回はキョンシーなどとも関係がありそうな恐ろしい蔭屍のお話しです((;゚Д゚))
蔭屍(いんし)は養屍とも言われており、埋葬した後でも腐敗しなくなった遺体を言います。遺体の表面は水分が蒸発して乾燥してしまいますが、それ以上は埋葬後十二年でも変わらず、さらには百年経っても変化しません。
蔭屍には二種類あると言われており、則ち蔭湿屍と蔭乾屍です。蔭湿屍は埋葬後十年経っても遺体に損害はなく、頭髪や爪は成長を続けていると言います。また、蔭乾屍は地下の遺体は乾燥しており水分が無く、口が大きく開いているといいます。
- 蔭屍の作り方
蔭屍が出来る主要因は棺の処理や埋葬した土壌の性質や地形であるとされています。則ち棺の質、埋葬場所の温度、化学物質、空気と言った条件を満たすと蔭屍になります。有る説では、陰山、陰地、陰向に埋葬すると遺体は蔭屍に変化しないと言います。
温度は氷点下であれば遺体の水分は氷ってしまうため腐敗はしません。腐敗に関しては温度が低い程進行しにくくなります。
化学物質に関しては例えば旧ソ連の指導者、レーニンの遺体は現在でも保存されていますが、これは酢酸カリウムに漬けることで保存性を高めていると言われています。エジプトのミイラを作る際にはナトロンと言う炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物を使用していました。ナトロンは吸湿性があるため遺体の水分を吸い取り保存性が高まりミイラが出来ます。その他にはホルマリンなども使用され、様々な体の部位が腐敗しないようにホルマリンに漬けられます。
空気も遺体を腐敗させる要因で、空気中の酸素に触れるとバクテリアは増殖します。しかし、空気に触れなければバクテリアは増殖しにくいので棺を密閉して空気を遮断出来ればやがて棺内の酸素濃度が低下して遺体の腐敗速度は遅くなります。
これらを踏まえて過去に蔭屍が発生した際は以下のような条件を満たしていたと考えられます。
- 硬くて腐りにくい上質の木材で棺を作り、さらに漆を長期間かけてゆっくりと何層にも塗りこんで行くことで気密性の高い丈夫な棺が完成します。
- 墓を作っているときに大量の石灰石を墓穴に入れます。石灰石が土の中の水分を吸収することで棺と遺体の保存性が高まります。
- 山の上などの高地に墓を作ることで薄い空気と低い温度で遺体が腐りにくくなります。
- 蔭屍と中国神話との関連性
腐らない遺体である蔭屍と言えば殭屍、則ちキョンシーを思い浮かべる方は多いかと思います。蔭屍はまさにキョンシーになる一歩手前です。キョンシーは様々な神話や伝説が合わさり完成した妖怪でありますが、今回ご説明した蔭屍とも深い関係があります。蔭屍は風水中で見られますが、これは歴史的な変遷を受けて殭屍、則ちキョンシーと同一視されている場合があります。
キョンシーのルーツは二通りあり、旱魃と言う日照りの女神に由来する説と人間に宿るとされている三魂七魄の内の死後に魄だけが体内に残ってしまったために発生すると言う説があります。
中国の農村部では、干ばつが続くと最近亡くなった人の遺体が旱魃と言う化け物に変わったために日照りが起こったのだと最近まで考えられていました。遺体が旱魃に変わった場合には遺体は腐敗せずに緑色になるとされています。墓の周りからは水がにじみ出ているため、旱魃に変わった遺体はすぐに発見できたと言い、この旱魃を放置しておくとやがて甦ると言います。こちらの説の方が蔭屍のイメージに近いです。
旱魃に関しては以下をご覧ください!
旱魃:美しい女性から恐ろしいキョンシーにまで変わってしまった悲劇の天女
もう一方の遺体に魄だけが残ってしまう場合は、風水的によくない埋葬をした場合や道教の道士の術によっても作り出されると言います。術により人為的に魄を残す方法は道教で赶屍(がんし)術と言われており、元々戦乱で死んでしまった兵士を自分の足で歩かせて故郷へ送るための術でした。この術は湖南省の西湘辺りで発祥したとされています。時代とともにこの殭屍、則ちキョンシーは道教の茅山道士が専門で対処する怪物となっていきました。こちらのキョンシーは映画などのイメージです。
キョンシーに関しては以下をご覧ください!
出典:baidu
はじめまして。
キョンシー映画を自主で作ろうと考えネットを探してお邪魔しました。
これまで読んだどんな文献より詳しく引用、解説があり非常に助かっています。
これからも時間をかけて読ませて頂きます。
また引用の文献も書店で予約しました。
ありがとうございます!