中国神話の奇妙な熊と狸の怪物を集めてみた。怪熊と怪狸特集1(黄熊、猎猎、朏朏)

中国神話には以外にも熊の怪物はあまり出て来ず少ないです。熊は身体が大きく運動の能力も非常に高いので強さの象徴として描きやすく、また巨体も相まって様々な怪物として描かれていそうですが、意外です。今回はそんな熊の怪物とこちらも少ない狸の怪物を合わせてご紹介いたします。

黄熊(きぐま huang2xiong2 フアンシオン)

黄熊は古代中国神話では鯀と言う人物が変わった怪物として描かれています。




山海経の中山経には、”さらに東へ十里に青要山があり、天帝の密都であった。青要山の山頂から北を向けば黄河の湾曲部分が見え、ここには野鵝(ガチョウ)が多くいた。青要山から南を向くと墠渚が望め、大禹の父親である鯀が黄熊に変わってしまったしまった場所であった。”とあります。

山海経中山経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,5 五蔵山経中山経編

鯀は夏王朝を建国した大禹の父親で、治水工事を行ったとされています。鯀にはいい評価と悪い評価が付きまとっており、何とも判断がしがたい人物です。悪い評価は古代中国の悪の象徴となっている四罪に数えられています。

息子の大禹は悲願の黄河の治水を成功させ、夏王朝を建国したという並ぶもの無き英雄です。その父親にもかかわらず四罪となってしまっています。逆に言うと、父親が罪深かったのでその分大禹が頑張ったとも読み取ることが出来ます。一方で、親子二代で治水を成功させたという勤勉な人物像も伝わっております。

山海経の他にも、《国語・晋語八》には、”昔鯀が帝命に従わずに于羽山で処刑された。その後鯀は黄熊となり于羽淵に入った。”とあります。《左伝・昭公七年》にも、”昔堯が鯀を于羽山で処刑した。その神が黄熊になり于羽淵に入った。”とあります。

鯀の死後、死体は三年腐らず、祝融が死体を切ってみると禹が出てきました。さらに鯀の死体は黄龍に変わり飛び去りました。一説によると黄熊とも言われています。黄熊はすでに絶滅してしまった可能性がある熊に似た動物を指しているのではないかとも言われています。

鯀に関しては以下をご覧ください!

四罪(共工、鯀、三苗、驩兜):古代中国神話中の悪行を尽くし舜に断罪されてしまった悪神達

出典:baidu

猎猎、猟猟とも(りょうりょう lie4lie4 リエリエ)

猎猎は古代中国の怪物ですが、その他にも北風が吹く様を表しています。

猎猎は山海経の大荒北経に記載が見られ、”叔歜国があり、そこに住む人は皆顓頊の子孫で、黄米を食べ、虎、豹、熊、羆の四種の野獣を飼いならしていた。形状が熊に似た黒虫がおり、名を猎猎と言った。”とあります。




虫とありますが、これは昆虫のみを指しているわけではなく古代中国では蛇や蜥蜴、蛙など現在でも虫偏のつく漢字に代表される生き物を指しています。従って、黒蛇や黒蜥蜴でも黒虫として考えられます。ただし、熊に似た黒虫とは何なのかよくわかりません。

山海経大荒北経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,17 大荒経大荒北経編

出典:baidu

朏朏(ひひ fei3fei3 フェイフェイ)

朏朏は古代中国の獣の名前です。朏という漢字にはみかづきと言う意味があるようです。

朏朏は山海経の中山経にその記載が見られ、”さらに北へ四十里に霍山があり、そこにはカジノキが繁茂していた。山中には野獣がおり、その形状は一般的な野猫のようだが白い尻尾があり、首の上には鬣があった。名を朏朏と言い、人が飼うと憂いを取り除くと言う。”とあります。

山海経中山経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,5 五蔵山経中山経編

出典:baidu

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