干ばつが起こる前に現れ、食べると病気が治る中国の蛇の怪物、肥遺(フェイイー)

一般的に蛇は邪悪な象徴として良く描かれます。その細長い形状の見た目の恐ろしさや毒、そして音もなく静かに獲物に近づき、獲物を締め付けて丸呑みするなど残酷なイメージが付きまとっていることもその一因だと思います。蛇は妖怪のデザインにもよく使用されていますが、肥遺や化蛇など中国にも蛇をモチーフにした妖怪は沢山います。中国では蛇の妖怪は一体どのような描かれ方をしているのでしょうか?今回ご紹介するのは中国の蛇の妖怪、肥遺です。一体どんな妖怪なのでしょうか( ´∀`)

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  • 肥遺 ひい fei2yi2 フェイイー

肥遺は中国の古代神話中に出てくる干ばつの兆しです。山海経には、肥遺は二匹の蛇と一羽の鳥が合わさった形状をしています。伝えられるところによると、肥遺は渾夕山の山麓に住む怪蛇で、一つの頭、二つの胴体を持っており、出現した地方には大干ばつをもたらすとされています。一方で、肥遺は黄色い鶉に似た鳥であり嘴は赤く、肥遺を食べると病が治り寄生虫を防止するという説もあります。




山海経・西山経には、”西に六十里、太華山に四方を削った高さ五千仞でその広さ十里の場所があり、そこには鳥や獣は住んでいなかった。唯一蛇がおり名を肥璭と言った。六つの足と四つの翼を持ち、天下の大干ばつを見ることができた。”とあります。肥璭は太華山に住む妖蛇で出現した地方には大干ばつが起こった、と言います。この肥璭は肥遺のことを指していると考えられています。

山海経に関しては以下をご覧ください!

山海経を読もう!No,2 五蔵山経西山経編

山海経・北山経には、”北に八十里の場所に渾夕山という山があった。草木はなかったが銅玉が多くあった。水が湧き出し、北西を流れて海にそそいだ。その場所には一つの頭と二つの胴体を持った蛇がおり、名を肥遺と言った。その国で起こる大干ばつを見ることができた。”とあります。




山海経・西山経には、西に七十里のところに英山という山があった。英山中には杏や樫の木が豊富にあり、鉄や金が沢山あった。大量の水が湧き出て北を流れ、その水の中には雷魚が沢山いた。雷魚はすっぽんに似ており、羊のような鳴き声であった。様々な不思議な動物の中に一種の鳥がいた。形状は鶉のようだが体は黄色で尾は紅色であった。名を肥遺と言った。この鳥を食べると病気が治り、寄生虫を駆除できた、とあります。

また、山海経・西山経には肥遺について別の記述があります。すなわち、東に三百里のところに彭毘山という山があった。この山には草木はなかったが、金玉が多くあり、豊富にある地下水が湧き出ていた。この湧き水は南を流れておりこの水中には肥遺という蛇がいた、とあります。この記述中の肥遺は渾夕山と同じ肥遺を指しているのではないかと言われています。

明の時代の朱国楨は、誦幢小品の第三十一巻で、万暦十四年、丙戌1586年に建昌県、今でいう江西永修県の山中で六本足の大蛇が現れた、と書いています。頭には角が一本あり、人を見ても咬みつかずに驚く様子もありません。群衆は黙って見守っていましたが、やがて深い山中へと去っていきました。

華山記には、足の六本ある蛇を肥遺と言った。千里内の干ばつを見ることができた。戊子や己丑の災いは予見することができた、とあります。

干支とは十干と十二支を合わせたもので、十干十二支、略して干支と言います。近年では干支と言えば12年周期ですが、実際は60年周期です。十干とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10要素を言い、十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥要素を言います。10種と12種ですので合計が120種ですが、その半分の60種の組み合わせのみ使用されています。残りの60種は使用されていません。このため干支は60年で一周しますので、単純に60歳を還暦と言います。厳密には新年で歳を取る、数え年61歳のことを還暦と言います。

中国の歴史的な出来事の名前などにはこの干支が使用されていることがあります。有名な出来事は、孫文たちが起こした辛亥革命です。辛亥革命が起こった年は1911年で干支で言うと辛亥の年でした。

京山県志の第一巻には、明代の末年、癸酉1633年に湖北京山県の民家脇の溝に六本足で鶉のような怪蛇が現れた。体長六尺で周囲一尺、体は紅緑色で人を咬むことはなかった。郝楚望は、これは肥遺である。このあたり千里一帯に干ばつが起こるだろう、と言った。その後、実際に干ばつが起こった、とあります。

出典:baidu

肥遺は文献により様々な形態を持っており全体像がはっきりしません。全て書きだすと水中や深い山中に住んでおり、干ばつの兆しを感じ取れ、兆しを感じ取ると人里に現れ、肥遺を食べると病気が治るとともに寄生虫を駆除でき、頭が一つで胴体が二つで、蛇と鳥が合わさっており、足が六本あり羽が四本あるといいます。鶉のようであったり、蛇のようであったり様々です。

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ふと疑問に思ったのですが、干ばつの前に時折人里に現れることが特徴ですが、肥遺を食べると病気が治るので人里に行くことは食べられに行くようなものかもしれません…((;゚Д゚))

特に人に害を与えるという記述は有りませんので、蛇の見た目とは裏腹におとなしく、人々に干ばつがやってくることを教えてくれるので、肥遺は優しい霊獣というイメージを持ちました。

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