この事件が起こったのは1920年代でした。その当時10歳くらいであった少女の身の回りで起こった怪奇現象です。何が起きたかと言いますと、なんと彼女の村の村人が死後キョンシーに変わってしまったのです!
このような怪奇現象はテレビの中だけではなく、実際に起こるものなのでしょうか?もしかしたら子供を怖がらせるために作られた話と思うかもしれません。しかし、実際にその怪奇現象を目の当たりにした人が生存しており、その人物に会って直接その話を聞くと、次第に事件の詳細が浮き彫りになりました。
事件を目撃したという少女は今ではもうお婆さんになっており、そのお婆さんに会って直接話を聞いてみました。すると、このお婆さんの話は細部にわたり鮮明であり、驚いたのはそのお婆さんと同年代の村人たちも口をそろえて同じことを話し出したのでした。同じ情報を共有しているということは何かしら情報の元となる事柄が全員の身に起こったことを意味しています。本当に村人がキョンシーとなってしまったのか疑問でしたが、少し信憑性が増したと思った瞬間でした。
村人がキョンシーになってしまったという家の部屋はまだそのままの状態で残っているということでした。もちろん、事件の後にその部屋に住もうとした人はいないと言います。また、誰もその家を壊して新しい家を建てようとしませんでした。その家は村の入り口付近の荒涼とした墓地の脇に静かにたたずんでいました。
キョンシーに関して以下をご覧ください!
この家は以前はお金持ちの家で、父母が多くの遺産を残しました。兄弟三人で分けた後、次男と三男はそのお金で街へ行き生活を始めました。長男は家を継ぎましたが赤ちゃんが一人いたので古い部屋を改築して新しくしました。家の大きさは当時の村の中では良く、部屋の配置も合理的でデザインも洗練されていました。
しかし、奇怪なことに新しい部屋が建てられてから男性の体調が日増しに悪くなり、遂には亡くなってしまいました。村の世話人は死後すぐに埋葬はせず、亡骸を棺に入れた後、堂屋内に備え付けられた霊堂に三日間放置して中国の風習である昇官發財の意を表しました。
二人の弟が兄を弔うために戻ってきて長男の奥さんの手伝いをしました。一日目の夜、二人の弟は守霊をし、何事もなく時間は過ぎました。二日目の夜になると弟たちは大変困りましたが、未亡人となった兄嫁と一緒に住むことは良くない噂を呼ぶ恐れがあるために別の村人の家に泊まり、兄嫁と交代で守霊をしました。
兄嫁は夜の前半を担当しましたが、まだまだ心の支えが必要で、後半になると疲れと悲しみで赤ちゃんを連れて部屋に眠りに帰りました。夫が死に二人の叔父は家におらず、こんな時にもし賊が押し入ってきたらと考えると怖くなり、眠りについたかどうかも定かではありませんでした。夜中になると、堂屋から伝わってきた物音で目が覚めました。物音は誰かがタンスを押しているような音で、本物の賊が来たように思われました。彼女は赤ちゃんを動かさないように枕元に置いてあった棍棒を準備し、気を付けて堂屋に行きました。
堂屋の中に設置された霊堂の配置は元のままで、供え物なども何もなくなっておらず、周囲の椅子や机などにも変化は見られませんでした。盗賊の影は一切見当たりませんでしたが、先ほどの音は確かに人の立てた音であり、状況から賊が霊堂に侵入したと考えるのが自然でした。
賊もきっとびくびくしていることと、霊堂で凶行には及ばないだろうという考えから、兄嫁はこの状況でも恐れを感じませんでした。兄嫁はゆっくりと歩いていき、霊堂までたどり着きましたが、有ったのは棺ただ一つでした。しかし、緊張が解けることはなく、何と棺の中から何やらもがく音が聞こえてきたのでした。
棺の中で何かが動いており、それは夫ではないことは確かに思えました。死人は動かないからです。しかし、賊が棺の中に入ったとも考えにくく、彼女は棍棒で棺の上を敲き、蓋を開けようと側面から棺の蓋を押し、賊が居たら棍棒で思いっきり叩こうという気構えでした。しかし、蓋は釘がしっかり打ち付けてあったので全く動かず、開けることはできませんでした。棺の中で動いているものは一体何なのか見当もつきませんでした。
兄嫁は夫の事を本当に愛していました。そして、実は死んではいなく、もしかして棺の中で生き返ったのではないか?という考えが頭をよぎりました。彼女は棺を抱きかかえて夫の名前を叫び、棺の蓋を開けて夫を助け出そうとしましたが棺の蓋を打ち付けてあった釘を抜き始めました。釘を抜いている途中に慌てていた彼女も次第に冷静になり、夫が棺に入れられた時にはすでに体は冷たくなっていたことを思い出しました。そもそもどうやって生き返るのだ、ということも頭をよぎり数歩退き棺から距離を取って再び夫の名前を呼ぶと共に本当に生きているかどうか聞いてみました。
すると棺の中から音がしましたが返答はなく、代りに低いうめき声が聞こえました。うめき声は次第に大きくなっていき遂には咆哮に変わりました。そして、棺を内側から叩き始めたのです。蓋は叩かれるごと激しく振動しました。
兄嫁は焦り蓋を固定しようと家にあった銅銭を持ってきて重しにしようとしました。銅銭を持って戻ってきた彼女は驚いた魂が夫の遺体から抜けて飛んで行ったことに気が付き、棺の中の夫はすでに殭屍(きょうし、キョンシー)になっていることを理解しました。
中国では古くから人間の精神は三魂七魄が司っているとされ、人の死後に魂は天に、魄は地に帰るとされています。殭屍、即ちキョンシーは遺体から魂だけが抜けて魄が残った状態だと言われています。
兄嫁は急いで寝床に戻り、子供を連れて家の外に出ようとしましたが、家の外に出るためにはキョンシーのいる堂屋を通らなくてはなりません。あの恐怖を思い出すと堂屋に戻ることは出来ませんでしたが、何とか逃げなければと思い辺りを見回して窓から逃げることにしました。しかし、窓は村の通りに面していましたが、その部屋の窓は高い位置に設置されている上に小さく、ここから出ていくことは彼女には無理でした。彼女にはもはや大声で叫ぶことしかできず、出来る限りの大声を出して叫びました。
農村の夜は非常に静かです。静寂を切り裂くように兄嫁の叫び声が農村中に広がったために農村の住民の半数は目を覚ましました。みんな何が起こったのかわからずきっと賊が襲ってきたと思って手に棍棒を持って叫び声の主である兄嫁の家へ向かいました。二人の弟も戸を開けて外に飛び出し、堂屋へと走っていきました。しかし、驚きのあまりすぐに戻ってきました。別の数人も家の中に突入しようとしましたが思いとどまりました。なぜならば、兄嫁のいる部屋の窓越しに彼女の叫びが聞こえたからです。兄嫁はヒステリーになって痄屍、痄屍!と叫んでいたのです。
このキョンシーを表す痄屍という言葉に村人は恐怖し、誰一人として家の中に入ることが出来ず、同時に兄嫁も外に出ることができませんでした。兄嫁を窓から逃がそうとしても窓は小さすぎ、子供がやっと逃がせる程度の大きさでした。村人たちは取り急ぎ、子供だけでも逃がそうとしました。
棺の中のそれは次第に騒がしくそして狂暴になり、状況を見守っていた村人は恐怖で逃げかえったため周囲にいた人の数も次第に少なくなっていきました。人が少なくなると恐怖も増していきこの状況に対処しようとする人々もいなくなりました。
そして空が白み始め、ある村人は道士に助けを求めに、そしてある村人は保安団を呼びにそれぞれ走りました。保安団は民兵で槍を持ってやってきました。村人に比べて危険な状況に慣れている保安団でしたが家に入った途端に恐怖で逃げ出したため誰一人として兄嫁を助け出せる人はいませんでした。
有る者は棺の蓋の上から槍で突き刺してキョンシーを倒そうと提案しました。しかし、棺の蓋は頑丈であり、今までキョンシーが暴れても壊れないので槍で蓋に穴を開けることはかえってキョンシーが棺から出ることを助けることになるのではないか、という意見により却下されました。そうこうしているうちにお昼になりましたが、棺の中の怪物は一向に動きを止める様子はなく暴れ続けている上に、だんだんと力強くなっていき、遂には棺の釘がゆっくりと動き出してしまいました。
保安団たちは全員その場にたたずんでいました。棺が破壊されてキョンシーが出てきたら逃げ場がないことを悟ったからです。保安団は背水の陣で槍を持ち攻撃の指示を待っていました。キョンシーが出てきたときに突撃を行い槍を突き刺す覚悟でした。しかし、この攻撃はキョンシーに効くかどうかわからず、効かなければもはや手の打ちようがないということを意味します。兄嫁は泣き、二人の叔父も泣いていました。兄嫁を助け出そうとして壁に穴を開けようとしたのですが、壁には良質な石材が使われていたので十分な工具がない状況で短時間で壊すことは不可能でした。まるでその壁が棺に思え、兄嫁が生きたまま棺に入れられたと感じたのです。
その時、早朝に道士に助けを求めた村人が道士を連れて戻ってきました。村人は全員生き仏を拝むように兄嫁を助ける方法を求めました。道士は人々を安全な場所に避難させ、手には法具を持ち弟子を引き連れて現場に歩いていきました。道士は早速術を行うために火を起こし、御札を燃やし、御札を棺に貼り付けました。すると、棺の中で暴れていたキョンシーの動きは止まり急に大人しくなりなったのです。そこである人が家の中に入っていき、兄嫁を抱えだして出てきました。村人たちは道士にお礼を言いつつ、しかしことの顛末が気になって道士に夫の遺体がどうなったのか一目見てみたいとお願いしました。道士は兄嫁に見ないほうがいいと忠告しました。遺体は今では変わり果てて人ではなくなっていたからです。
風水で調べてみると、その家は風水的には最悪で特に堂屋は陰陽が交差する地で死人を放置しておけば必ず痄屍となる場所であることもわかりました。つまり、家を改築した際に風水的な位置関係が悪化したために夫は体調を壊し、さらには死後にキョンシーになってしまったのだ、ということが推測されました。しかし、兄嫁も夫がどうなったのか見てみたくなり、村人達も同じ思いでした。道士は考えましたが、最終的に同意しました。棺の釘を抜き、道士が蓋に手をかけて開けました。特に危険はなく、人々は棺の中を一目見ようと棺に押しかけました。
棺の中を見ると人々は驚き後ろに飛びのきました。兄嫁はさらに力を落として倒れ込みました。夫の体が緑色になってしまっていたからです。表情は恐ろしく、全身は腫れあがり犬歯は伸びて指の爪も長く突き出ていました。爪の間には木屑が挟まっており、棺の蓋の上にはその鋭い爪で引っ掻いたと思われる無数の疵が残されていました。
道士は蓋を閉じて兄嫁に今晩一晩おいておいて明日葬りなさい、と言いました。夜は守霊はいらないが、葬る場所の周囲に水源がない場所を選び、墓の上に棚を作るようにし、三か月墓の上に水が見られなければそれ以降は何事もないので心配いらない、とも言いました。兄嫁は同紙にお礼を渡し、食事を振舞い、お礼を言って道士を見送りました。
その後、道士の助言の通り、墓の上に棚を作り、短期の仕事で日銭を稼ぎながら兄嫁と二人の叔父が三か月間墓を見守りました。三か月経つと二人の叔父は街へ帰っていき、その後兄嫁を見たものは誰もおらず、墓にも戻ってくることはありませんでした。
その墓は第二次世界大戦後に掘り起こされました。当時担当した部隊は迷信だと言って信じませんでしたが、遺体を掘り起こしてみるとみんな驚きざわめきました。遺体が二十年以上地下にあったにもかかわらず、埋葬した時と全く同じで少しも腐敗していなかったのです。その場にいた誰もが恐怖しそれ以上動かそうとするものは誰一人としていませんでした。放置してしばらくすると遺体は消えてしまっていました。大方野犬がくわえて行ったのであろうと口々に噂しました。
その後、キョンシーが出来てしまった家に住む者はいなく、今では廃墟となり果ててしまっています。事件から大分時間が経ちますが、噂は近隣の村々へと広がり事件から大分時間が経過した今でもキョンシーが出来た家を一目見ようと多くの人が現場を訪れています。
出典:51qumi.com
久々のキョンシーネタです。中国で比較的最近起こったとされるキョンシー事件ですが、果たして真相はどうだったのでしょう((;゚Д゚))
恒例のキョンシーの階級チェックですが、今回出たキョンシーが緑色だったことに注目したいです。普通の遺体がキョンシーに変わったのであればせいぜい第二級どまりでしょう。しかし、今回は風水的に悪い場所に遺体を放置していたため、第三級という強力なキョンシーができてしまったようです。第三級の特徴は
第三級-緑僵:皮膚が緑色になり、地上のキョンシーの高い階級。生前の記憶を一部回復し、知能もだんだん高くなる。
となり、緑色の体は第三級の特徴です。その上の階級の第四級は地上のキョンシーの王なので、幹部クラスのキョンシーが出現したことになります。ドラクエで言うとリビングデッドやグールなど腐った死体の上位モンスターレベルです。微妙に死にたてのフレッシュな遺体なので腐りかけの死体でしょうか。いずれにせよこれは放置しておけば一般人では束になっても敵わずに大惨事になっていたことでしょう((;゚Д゚))
このキョンシーは最後は居なくなってしまいましたが、今でも中国のどこかで元気にぴょんぴょん飛び跳ねているといいですね( ´∀`)
道士が言った、墓が湿っているか確認するように、とは遺体が旱魃に変わっているかどうか確認する、という意味があります。もともとキョンシーは旱魃に変化した遺体の事を指している場合があり、そして、遺体が旱魃に変わるとその地方では日照りの干ばつが起きると信じられていました。
実際、ある地方で干ばつがあると最近埋葬した遺体が旱魃に変わったためだとして、干ばつが起こる前に埋葬した墓を掘り起こして遺体を焼却したという風習が最近まで中国各地でありました。そして、旱魃に変わった遺体の墓からは水が湧き墓の表面が湿ると言われているのです((;゚Д゚))
今回の状況は初級の道士では対応は難しく、今回対処した道士はかなり経験を積んでいる道士だと思われます。こういう時に道士は頼りになりますが、一方で墓を掘り起こしても腐っていなければそれはそれで解決してないのではないか?という素朴な疑問が沸き起こります…。
キョンシーに関して以下をご覧ください!
旱魃に関しては以下をご覧ください!
旱魃:美しい女性から恐ろしいキョンシーにまで変わってしまった悲劇の天女