電気ウナギは電気を発生させて獲物をしとめるだけの単純な生き物に思えるかもしれませんが、実際の機構はかなり複雑で、動物界でも最も注目すべき種の一つです。電気ウナギは獲物を捕らえる際の電気放電で電圧を変えて獲物の動きをコントロールしたうえでぱっくり食べてしまいます。以前、このグループは、とりわけ大きな獲物を捕らえるときに、より大電力を使用する特別なモードがあることを突き止めました。この時放電される電力は、アメリカの標準てきな壁のコンセントの電力のなんと5倍です。
以前の研究報告は以下の記事をご覧ください!
バンダービルト大学の生物学の研究者であるKenneth Catania教授は、他の地域と隔離されてきた南米の生き物の生体を3年に渡って研究してきました。教授は、とりわけ電気ウナギがアマゾンやオリノコ川といった泥の混じった水の中でどのように電気の流れを利用して、隠れている獲物を見つけ出し、電気ショックで気絶させて捉えることに興味を持ちました。電気ウナギは体長2.4mで体重20kg程度にまで成長します。
”しかし、これまでの研究で、電気ウナギは放電をコントロールすることで、多くの複雑な能力を獲得していることがわかりました。”教授は、電気ウナギは大きな獲物や、攻撃的で反撃してくる獲物に対しては、電気ショックを二倍にするという特別な方法を用いていることを発見しました。電気ウナギの放電システムは基本的には獲物を麻痺させることに使用されます。また、カターニア教授は、以前、電気ウナギが3つの異なったタイプの放電を行っていることを明らかにしました。
今回発見された三つ目の放電法は、電気ウナギはまず獲物にかみつき、かみついたまま身体をまるめ、その状態で高電圧のパルス間隔を短くしていくというものです。電気ショックは放電体に近いほど強力になるので、なるべく獲物を身体に近づけた上にさらにパルス間隔を短くして電気ショックの効果を高くするという合理的な攻撃方法です。さらに、電流は電気ウナギの頭部にある”陽極”からしっぽにある”陰極”へと流れますが、獲物に巻き付き陽極と陰極の位置を近くすることで、電場の強さをより強くして獲物への電気ショックを強くしているのだと、教授は考えています。教授は実験装置をデザインし、電力を測定してみたところ、獲物は通常の攻撃の2倍もの電気ショックを受けていることがわかりました。
高電圧パルスはレーダーのようにも用いられます。隠れている見えない獲物の筋肉をより素早く強くコントロールし、獲物の動きを水の振動から探知します。”このとき、獲物は完全に麻痺します。”と教授は説明します。電気ウナギは獲物を捕らえる際に、2~3ミリ秒の間で高電圧を発生させますが、この高電圧の発生周期は非常に正確で、筋肉全体の痙攣を引き起こします。
”電気ウナギの目はあまりよくありませんが、水の振動は非常に繊細にキャッチできますので、水の振動で獲物の位置を知ることができるのです。”教授は、高電圧パルスを獲物の動きを探るための高性能のレーダーシステムとして利用していることを突き止めました。”この高電圧パルスは、攻撃用としてもセンサー用としても利用できるので、もはや電気ウナギがただやみくもに電気を放出しているだけの原始的な生き物だとは言えません。”と、教授は結論付けました。
出典:dailymail