戦闘機特集の第二回目は、第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期(1920年~1939年)に作られた戦闘機です。
この時代になると日本も独自に戦闘機開発を行っています。日本は国際連盟を脱退し、軍拡、領土拡大、資源獲得へと舵を切り、ドイツは第一次世界大戦敗戦からの復興、ナチスの政権掌握、ヒトラーのヴェルサイユ条約破棄を期に軍備増強へと向かい、ロシアは社会主義のソビエト連邦となり、世界中で少しずつ出来た小さな歪が徐々に集まり、世界大戦という大きな破壊へと向かいつつありました。
初飛行の年、最高速度、上昇速度の表
第一次、第二次世界大戦の戦間期 | ||||
名称 | 生産国 | 初飛行 (年) |
最大速度 (km/h) |
上昇速度 (m/s) |
九一式戦闘機 | 大日本帝国陸軍 | 1929 | 320 | 9.3 |
九二式戦闘機 | 大日本帝国陸軍 | 1930 | 355 | 10.4 |
九五式戦闘機 | 大日本帝国陸軍 | 1935 | 400 | |
九七式戦闘機 | 大日本帝国陸軍 | 1936 | 470 | 15.5 |
一〇式艦上戦闘機 | 大日本帝国海軍 | 1921 | 215 | |
三式艦上戦闘機 | 大日本帝国海軍 | 1930 | 239 | |
九〇式艦上戦闘機 | 大日本帝国海軍 | 1930 | 292 | |
九五式艦上戦闘機 | 大日本帝国海軍 | 1934 | 352 | |
九六式艦上戦闘機 | 大日本帝国海軍 | 1935 | 460 | 14.1 |
Ar 64 | ドイツ共和国 | 1930 | 250 | |
Ar 65 | ドイツ共和国 | 1931 | 299 | |
ハインケルHe51 | ナチス・ドイツ | 1933 | 330 | |
Ar 68 | ナチス・ドイツ | 1934 | 335 | |
メッサーシュミット Bf109 B(ベルタ) | ナチス・ドイツ | 1936 | 468 | |
ハインケル He112 | ナチス・ドイツ | 1935 | 510 | |
Fw 159 | ナチス・ドイツ | 1935 | 385 | |
メッサーシュミット Bf109 G(グスタフ) | ナチス・ドイツ | 1941 | 621 | |
ブリストル ブルドッグ | イギリス空軍 | 1927 | 300 | |
グロスター グラディエーター | イギリス空軍 | 1934 | 414 | |
ホーカー フューリー | イギリス空軍 | 1929 | 333 | 11.5 |
ホーカー ニムロッド Mk.Ⅰ | イギリス海軍 | 1932 | 311 | |
ヴァーヴィル VCP | アメリカ陸軍 | 1920 | 235 | |
カーチス P-1 | アメリカ陸軍 | 1925 | 265 | |
ボーイング P-26 | アメリカ陸軍 | 1932 | 377 | 12.0 |
セバスキー P-35 | アメリカ陸軍 | 1935 | 499 | 9.7 |
カーチス F7C シーホーク | アメリカ海軍 | 1927 | 242 | |
ボーイング F4B | アメリカ海軍 | 1929 | 296 | |
グラマン F3F フライングバレル | アメリカ海軍 | 1935 | 425 | |
ポリカールポフ I-1 | ソ連 | 1923 | 264 | |
ポリカールポフ I-15 | ソ連 | 1933 | 360 | |
ポリカールポフ I-153 チャイカ | ソ連 | 1938 | 366 | |
ポリカールポフ I-16 イシャク | ソ連 | 1933 | 455 | |
CR.714 | フランス | 1938 | 487 | |
ドボワチン D.500 | フランス | 1932 | 402 | |
モラーヌ・ソルニエ MS.406 | フランス | 1935 | 486 | |
ニューポール・ドラージュ NiD 29 | フランス | 1918 | 235 | |
ポテ 630 | フランス | 1936 | 460 | |
フィアット CR.32 | イタリア | 1933 | 360 | |
フィアット G.50 | イタリア | 1937 | 473 | |
マッキ MC.200 サエッタ | イタリア | 1937 | 512 | |
フォッカー D-21 | オランダ | 1936 | 395 | |
フォッカーG.I | オランダ | 1937 | 475 | |
コールホーフェンFK58 | オランダ | 1939 | 504 | |
フォッカーD.23 | オランダ | 1939 | 525 | |
PZL P.7 | ポーランド | 1930 | 327 | |
PZL P.11 ペ・イェデナーシチェ | ポーランド | 1931 | 375 | 12.4 |
PZL P.24 | ポーランド | 1933 | 430 | 11.5 |
スベンスカ・ヤクトファルク | スウェーデン | 1929 | 310 |
この頃になると、戦闘機は大分高性能化しており、速度も400km/hを超える機体も出現し、レシプロ機の基本構造は固まりつつあります。車輪も飛行中に出たままのものから飛行中に機体内に格納する引っ込み脚が出現しています。
ドイツではメッサーシュミット社とハインケル社が有名でしたが、社長のメッサーシュミット氏はナチス党幹部であったため、メッサーシュミットは政治力が強く、一方のハインケル氏は反ナチ党でしたので不遇でした。
重量(全備は全備重量。その他は空虚重量)、馬力(レシプロ)もしくは推進力(ジェット)、生産数の表
第一次、第二次世界大戦の戦間期 | ||||
名称 | 分類 | 総重量 (kg) |
出力 | 生産数 (機) |
九一式戦闘機 | 単葉、単発 | 1,075 | 520馬力 | 444 |
九二式戦闘機 | 複葉、単発 | 1,280 | 600馬力 | 385 |
九五式戦闘機 | 複葉、単発 | 1,360 | 850馬力 | 588 |
九七式戦闘機 | 単葉、単発 | 1,110 | 710馬力 | 3,386 |
一〇式艦上戦闘機 | 単葉、単発 | 940 | 300馬力 | 128 |
三式艦上戦闘機 | 単葉、単発 | 950 | 420馬力 | 約100 |
九〇式艦上戦闘機 | 単葉、単発 | 1,000 | 580馬力 | 約100 |
九五式艦上戦闘機 | 単葉、単発 | 1,276 | 730馬力 | 221 |
九六式艦上戦闘機 | 複葉、単発 | 1,075 | 460馬力 | 1,094 |
Ar 64 | 複葉、単発 | 1,210 | 530馬力 | 24 |
Ar 65 | 複葉、単発 | 1,930 | 760馬力 | 約193 |
ハインケルHe51 | 複葉、単発 | 1,460 | 750馬力 | 700 |
Ar 68 | 単葉、単発 | 1,940 | 650馬力 | |
メッサーシュミット Bf109 B(ベルタ) | 単葉、単発 | 1,964 | 680馬力 | 33,000 |
ハインケル He112 | 単葉、単発 | 2,250 | 680馬力 | |
Fw 159 | 単葉、単発 | 2,250 | 680馬力 | 3 |
メッサーシュミット Bf109 G(グスタフ) | 単葉、単発 | 3,150 | 1,800馬力 | 33,000 |
ブリストル ブルドッグ | 複葉、単発 | 1,475 | 498馬力 | 443 |
グロスター グラディエーター | 複葉、単発 | 1,560 | 830馬力 | 744 |
ホーカー フューリー | 複葉、単発 | 1,600 | 525馬力 | 129 |
ホーカー ニムロッド Mk.Ⅰ | 複葉、単発 | 1,841 | 630馬力 | |
ヴァーヴィル VCP | 複葉、単発 | 938 | 350馬力 | |
カーチス P-1 | 複葉、単発 | 926 | 435馬力 | 149 |
ボーイング P-26 | 単葉、単発 | 996 | 500馬力 | 162 |
セバスキー P-35 | 単葉、単発 | 2,070 | 1,050馬力 | |
カーチス F7C シーホーク | 複葉、単発 | 924 | 450馬力 | 16 |
ボーイング F4B | 複葉、単発 | 1,401 | 500馬力 | 366 |
グラマン F3F フライングバレル | 複葉、単発 | 1,490 | 950馬力 | 147 |
ポリカールポフ I-1 | 単葉、単発 | 1,112 | 400馬力 | 18 |
ポリカールポフ I-15 | 複葉、単発 | 1,012 | 750馬力 | 2,452 |
ポリカールポフ I-153 チャイカ | 複葉、単発 | 1,348 | 1,000馬力 | 3,500 |
ポリカールポフ I-16 イシャク | 単葉、単発 | 1,266 | 750馬力 | 8,644 |
CR.714 | 単葉、単発 | (全備)1,748 | 450馬力 | 約100 |
ドボワチン D.500 | 単葉、単発 | 1,496 | 860馬力 | 381 |
モラーヌ・ソルニエ MS.406 | 単葉、単発 | 1,893 | 860馬力 | 1,176 |
ニューポール・ドラージュ NiD 29 | 複葉、単発 | 760 | 300馬力 | 約250 |
ポテ 630 | 単葉、双発 | (全備)3,916 | 660馬力 | 215 |
フィアット CR.32 | 複葉、単発 | 1,455 | 600馬力 | 190 |
フィアット G.50 | 単葉、単発 | (全備)2,395 | 840馬力 | 782 |
マッキ MC.200 サエッタ | 単葉、単発 | (全備)2,208 | 870馬力 | 1,153 |
フォッカー D-21 | 単葉、双発 | 1,225 | 645馬力 | |
フォッカーG.I | 単葉、単発 | 4,790 | 830馬力 | 36 |
コールホーフェンFK58 | 単葉、単発 | 1,800 | 1,080馬力 | 18 |
フォッカーD.23 | 単葉、双発 | 2,180 | 530馬力 | 1 |
PZL P.7 | 単葉、単発 | 1,090 | 520馬力 | 149 |
PZL P.11 ペ・イェデナーシチェ | 単葉、単発 | 1,147 | 630馬力 | |
PZL P.24 | 単葉、単発 | 1,330 | 930馬力 | 約300 |
スベンスカ・ヤクトファルク | 複葉、単発 | 946 | 520馬力 | 19 |
エンジンの進歩に伴い馬力が高くなり、主翼も単葉が増えています。双発機も出現しています。エンジンが大きくなり、装甲に金属を使用しだしたため、重量は1tを超える機体が多くなっています。
ドイツでは名機メッサーシュミットBf109の初期型が完成しており、高い性能を誇っていました。Bf109は第二次世界大戦を通して3万機以上生産されており、都度アップグレードされていました。(メッサーシュミットBf109のデータはBf109グスタフのもので、第二次大戦中の機体のデータです。)
日本もパラソル翼の九一式戦闘機から日本独自の設計開発がなされています。九七式戦闘機は後の零戦につながる帝国陸軍初の低翼単葉機です。低翼機は運動性がよく、小回りがききます。九六式艦上戦闘機は零戦の主任設計技師の堀越二郎氏の設計ですが、氏をもってして零戦以上の会心の作と言わしめた機体です。
各国とも戦争の準備を着々と進めているのが伺えます。

出典:wikipedia

出典:wikipedia

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下のグラフはこれまで作られた戦闘機の最大速度を初飛行した年でプロットしてみました。レシプロ機自体は時速950kmあたりが限界で、第一次大戦から第二次大戦にかけて最大速度は950km/hに向かって緩やかに増加し、770km/h付近でジェット機に切り替わりました。ジェット機が出来て、ある程度技術が向上し安定して飛行できる機体ができた1950年以降に最大速度は急激に上昇しています。最大速度競争です。1970年付近になると、速度は2,500km/h位で頭打ちになり、速度以外の運動性や電子機器などの性能向上に注力されました。最高速度に関しては、速度が速すぎると空気との摩擦や抵抗で機体が持たないので、近年でもマッハ2(成層圏付近を飛行した場合で2,160km/hくらい。地上付近だと2,450km/hくらいの速度。)程度の機体が多いです。マッハ3以上で飛行すると隕石の落下と同じ空気の断熱圧縮で飛行機の外壁が高温となり主として用いられているアルミ合金だと、融点が低いので溶けてしまう危険があります。
下は各戦闘機の上昇速度のグラフです。第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて上昇速度の向上はほとんどみられません。レシプロ機での上昇は非常に難しいのがわかります。1950年以降は爆発的に向上しています。プロペラで進むのと、燃焼ガスを噴出して進むというエンジンの推進構造の差が顕著に見られます。1970年以降は上昇速度は緩やかに向上していますが、一方で最高速度は向上していません。その分、加速の向上や翼の形状をクリップトデルタ翼等のデルタ翼にして運動性能を向上させています。
次は第二次世界大戦中の戦闘機を紹介します。