開明獣(かいめいじゅう kai1ming2shou4 カイミンショウ)
開明獣は古代中国神話中の神獣で、《山海経・海内西経》にその記述がみられます。
即ち、”崑崙の南淵深三百仞。開明獣虎の類で九首、皆人面、東に向かい崑崙の上に立つ。海内崑崙の虚、西北に天の神の下都がある。崑崙の虚、八百里四方、高さ万仞。上に長さ五尋で大きさ五圍(1圍は両腕を使って丸を作った時の長さ)木禾(背の高い穀物)があった。そして九つの井戸があり周囲は玉で柵になっていた。正面には九門あり、これらの門を開明獣が護っており百神の所在である。八隅の岩がある赤水の岸に神話の英雄である羿でないと登れないような大きな岩があった。”とあります。
崑崙山は神話の神々や仙人たちが住んでいるという伝説の山であり、その山にある九つの門を守っているのがこの開明獣なのです。大きさや胴体は虎のようですが、頭部には人間のような頭が九つあるという異様な見た目をしています。
山海経の出典ですが、山海経の面白いところは山や河など自然の描写をしていると突然不思議な生き物が現れる点です。例えば富士山という山の南側には川が流れていて富士川と言ったその川の中には銀がたくさんあり大きな魚がいた。その魚には腕が生えており鳥のように鳴き…という淡々とした流れで不思議な生き物が出てきますので思わず二度三度読み返してしまいます。
基本的には中国各地の地形の描写や産出物、植生などが書かれている書物ですが、その中にその地方に住んでいる妖怪などについても書いてあります。作者は大まじめに書いているのか遊び心で書いているのかわからなくなりますが、書かれた当時はまだまだ妖怪などがまことしやかに信じられていた時代でしたので大真面目に書いていたのだと推測しています。
袁珂はこの山海経の記述に関して注釈として。”開明獣はすなわち《西次三経》に書かれている神、陸吾なり。”と記しています。《庄子・大宗師》によると、肩吾、または開明であると称しています。その他にも様々な文献で開明獣のことに触れられていますが、陸吾や肩吾、開明などの妖怪と同一ではないかという指摘が多くあります。
崑崙山の九道門を守る開明獣ですが、気性は激しく勇猛で、大きな虎ほどの体躯をしています。九つの頭はどれも人の顔をしており表情は厳かで、常に崑崙山の周囲に目を配って崑崙に異常な生物が入ってこないように崑崙の安寧を守っています。
《竹書紀年》には西王母の側に服している霊獣と書かれており、万物の未来を見通す力を備えており。西王母と東王公が巡行する際には開明獣が先導し、主人の車をひきます。このため聖母王から寵愛を受けています。
開明獣が陸吾であるという説が見られますが、陸吾とは《山海経・西次三経》にある、”西南四百里崑崙の丘という、神陸吾これを司る。その神、虎の胴体で九尾、人面で虎の爪を持ち、神なり。天の九部と帝の園の季節を司る。”とあります。九という数字や虎など開明獣と重なる部分があります。
開明獣と陸吾は同一ではないとする考え方もあります。両者は別々でそれぞれ門番の事を指しているというものです。崑崙には西北と西南に門があり、片方は西北を、もう一方は西南を守っている、という内容です。
出典:baidu
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