第一次世界大戦編:世界中の戦闘機を集めて比較してみた。

1903年にライト兄弟がライトフライヤー号で有人動力飛行に成功して以来、飛行機は目覚しい進歩を遂げてきました。動力は第二次世界大戦までレシプロ(ピストン)エンジンでプロペラを回して推力を得ていました。第二次世界大戦後期になると、ジェットエンジンが登場し、現代でも使用されています。

戦闘機のエンジンの数も一機の単発と二機の双発があります。単発は機動性がよく、双発は速度が速いです。レシプロ機に関しては双発は翼にエンジンをつける構造により機動性が悪くなり値段も高くなります。全体的な性能は単発の方が良いです。ジェット機に関してはエンジンを後部につけるためにレシプロ機のように機動性が悪化しないので、全体的な性能は双発の方がいいです。ただ、双発は値段が高いので、アメリカ空軍ではハイ・ロー・ミックス運用といって頭数をそろえる目的でF-16ファルコンのように安価な単発の軽戦を大量に作って主力のF-15イーグルの支援機として使用しています。


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今回は第一次世界大戦時の戦闘機を集めて比較してみました。

レシプロ機(零戦:大日本帝国海軍)
A6M3_Model22_UI105_Nishizawa

 

出典:wikipedia

ジェット機(F-20:アメリカ)
300px-F-20_flying

 

出典:wikipedia

飛行機の主翼の数も、二枚の翼からなる複葉から一枚の単葉、形状も長方形の矩形から、先の方が細くなるように角度をつけたテーパ翼、飛行速度が音速領域になると後退翼、三角定規の形のデルタ翼、X-29の前進翼、三角形の角を切り取ったクリップトデルタ翼、翼の角度を変えられる可変翼など、様々に変化してきました。また、主翼の他にも主翼の後ろにつける水平、垂直尾翼、主翼の前につける前翼(カナード)があります。デルタ翼の前にカナード(前翼)をつけた形状をエンテ形といい、主翼とカナードをより接近させた形状をクロースカップルドデルタ翼といいます。また、スウェーデン製のドラッケンのように三角形を二つ合わせた形状のダブルデルタ翼という形状もあります。

代表的な主翼の形状

Wing_angles
航空機の主翼の形状(薄緑の部分)
① テーパー翼(XP-51)
② 後進翼(F-100)
③ 前進翼(X-29)
④ デルタ翼(F-102)
⑤ 可変翼(F-111)

⑥ 斜め翼(AD-1)

ダブルデルタ翼(ドラッケン:スウェーデン)
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クロースカップルドデルタ翼(クフィル:イスラエル)
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クリップトデルタ翼(F-15:アメリカ)


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出典:

wikipedia 

ジェット機は、技術の進歩と共に世代ごとに分類されており、現在は第五世代で、レーダーに映りにくい性能、ステルス性や先制攻撃の能力が高い機体(F-22等)が属します。世代を大雑把に分類すると、第1世代が初期の音速以下の戦闘機で、第2世代は超音速(F-8クルセイダー等)、第3世代は追尾ミサイル攻撃が出来る機体(F-4ファントム等)、第4世代は推力、運動性、電子装備等、第3世代を更に高性能化した機体(F-15等)です。微妙な世代に第5世代の機能をもつ第4世代という意味で、第4.5世代という分類もあります。


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下のグラフはこれまで作られた戦闘機の最大速度を初飛行した年でプロットしてみました。レシプロ機自体は時速950kmあたりが限界で、第一次大戦から第二次大戦にかけて最大速度は950km/hに向かって緩やかに増加し、770km/h付近でジェット機に切り替わりました。ジェット機が出来て、ある程度技術が向上し安定して飛行できる機体ができた1950年以降に最大速度は急激に上昇しています。最大速度競争です。1970年付近になると、速度は2,500km/h位で頭打ちになり、速度以外の運動性や電子機器などの性能向上に注力されました。最高速度に関しては、速度が速すぎると空気との摩擦や抵抗で機体が持たないので、近年でもマッハ2(成層圏付近を飛行した場合で2,160km/hくらい。地上付近だと2,450km/hくらいの速度。)程度の機体が多いです。マッハ3以上で飛行すると隕石の落下と同じ空気の断熱圧縮で飛行機の外壁が高温となり主として用いられているアルミ合金だと、融点が低いので溶けてしまう危険があります。

無題

下は各戦闘機の上昇速度のグラフです。第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて上昇速度の向上はほとんどみられません。レシプロ機での上昇は非常に難しいのがわかります。1950年以降は爆発的に向上しています。プロペラで進むのと、燃焼ガスを噴出して進むというエンジンの推進構造の差が顕著に見られます。1970年以降は上昇速度は緩やかに向上していますが、一方で最高速度は向上していません。その分、加速の向上や翼の形状をクリップトデルタ翼等のデルタ翼にして運動性能を向上させています。

無題2

戦闘機の簡単な説明は以上で、早速これまで世界中で作られてきた戦闘機を見てみましょう。今回は第一次世界大戦中に作られた戦闘機の一覧です。

名称 生産国 初飛行
(年)
最大速度
(km/h)
上昇速度
(m/s)
フォッカー Dr.I ドイツ帝国 1917 160
フォッカー D.VII ドイツ帝国 1918 186 5.2
フォッカー E.III ドイツ帝国 1915 141
フォッカー D.VIII ドイツ帝国 1918 202
ファルツ D.III ドイツ帝国 1917 165
アルバトロス D.I ドイツ帝国 1916 175 2.8
アルバトロス D.II ドイツ帝国 1916 175 3.0
アルバトロス D.III ドイツ帝国 1916 175 4.5
アルバトロス D.V ドイツ帝国 1917 187 3.8
ジーメンス・シュッケルト D.III ドイツ帝国 1918 180 6.4
アヴィアティック D.I オーストリア帝国 1917  187
ヴィッカース F.B.5 イギリス 1914 1.6
エアコー DH.2 イギリス 1915 150 2.8
ソッピース パップ イギリス 1916 180 3.6
ソッピース トライプレーン イギリス 1916 187 5.2
ソッピース キャメル イギリス 1916 185 5.5
ソッピース スナイプ イギリス 1917 195 4.9
RAF S.E.5 イギリス 1916 222
ブリストル F.2 ファイター イギリス 1916 198 4.5
アンリオ HD.1 フランス 1916 184 6.5
ニューポール 11 フランス 1916 156 3.3
ニューポール 17 フランス 1916 164 4.3
ニューポール 21 フランス 1916 140
ニューポール 24 フランス 1917 187 3.8
ニューポール 27 フランス 1917 187 3.8
ニューポール 28 フランス 1917 184 4.3
モラーヌ・ソルニエ L フランス 1914 115
モラーヌ・ソルニエ N フランス 1915 144 3.3
S.VII フランス 1916 212
S.XII フランス 1917 203
S.XIII フランス 1917 218

飛行速度は200km/h程度で新幹線並みです。上昇速度は10秒で30メートル程と人間の走る速度以下です。ドイツのフォッカー Dr.Iは、第一次世界大戦のエースパイロット、ガンダムの赤い彗星のシャアのモデルにもなった、かの撃墜王「レッドバロン」(赤い男爵)ことマンフレート・フォン・リヒトホーフェンも愛用していた機体です。リヒトホーフェンは機体の一部を赤く塗っていたので、レッドバロンのニックネームを持っています。この機体は主翼が三つもある三葉という珍しい構造をしています。この時代の戦闘機は戦争の舞台となったヨーロッパ諸国で盛んに開発されていました。


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フォッカー Dr.I
300px-Fokker_Dr1_on_the_ground
出典:wikipedia

下の表は機体重量と馬力、生産数の表です。

名称 分類 総重量
(kg)
出力 生産数
(機)
フォッカー Dr.I 単葉、単発 405 110馬力
フォッカー D.VII 三葉、単発 735 185馬力 3,200
フォッカー E.III 単葉、単発 400 110馬力
フォッカー D.VIII 単葉、単発 605 110馬力 約400
ファルツ D.III 単葉、単発 725 160馬力 約1,010
アルバトロス D.I 単葉、単発 645 150馬力 50
アルバトロス D.II 複葉、単発 637 160馬力
アルバトロス D.III 複葉、単発 695 170馬力 約1,866
アルバトロス D.V 複葉、単発 687 170馬力 約2,500
ジーメンス・シュッケルト D.III 複葉、単発 725 160馬力
アヴィアティック D.I 複葉、単発 580 185馬力 677
ヴィッカース F.B.5 複葉、単発 555 100馬力 224
エアコー DH.2 複葉、単発 428 100馬力 453
ソッピース パップ 複葉、単発 358 80馬力 1,770
ソッピース トライプレーン 三葉、単発 450 130馬力 147
ソッピース キャメル 複葉、単発 420 130馬力 約5,490
ソッピース スナイプ 複葉、単発 590 230馬力 2,097
RAF S.E.5 複葉、単発 639 200馬力 5,205
ブリストル F.2 ファイター 複葉、単発 975 190馬力 5,329
アンリオ HD.1 複葉、単発 407 110馬力 約1200
ニューポール 11 複葉、単発 344 80馬力
ニューポール 17 複葉、単発 375 110馬力
ニューポール 21 複葉、単発 320 110馬力
ニューポール 24 複葉、単発 354 130馬力
ニューポール 27 複葉、単発 354 130馬力
ニューポール 28 複葉、単発 475 170馬力 約300
モラーヌ・ソルニエ L 単葉、単発 655 90馬力 600
モラーヌ・ソルニエ N 単葉、単発 444 90馬力 49
S.VII 複葉、単発 500 180馬力 5,600
S.XII 複葉、単発 587 220馬力 300
S.XIII 複葉、単発 566 220馬力 8,472

この時代の飛行機は主翼が二枚の複葉が主流でした。馬力は現代の車よりも低く、重さを1t以下と軽くしてやっと浮かしています。馬力がなく揚力が得られない分、翼を増やして揚力を稼いでいました。生産数は数千機規模の機体もあり、すでに大量生産されています。

ドイツのフォッカー E.IIIはフォッカーの懲罰といわれて恐れられており、後に高性能機が出現するまでは敵なしの戦闘機でした。プロペラの間から機関銃を発射できるようになった初めての機体です。弾の命中精度が向上しています。アルバトロス D.IIIはマンフレート・フォン・リヒトホーフェン、エルンスト・ウーデット、エーリヒ・レーヴェンハルト、クルト・ヴォルフ、カール・エミル・シェーファーなど、多くのドイツ撃墜王が使用し戦果をあげました。イギリスのソッピース パップは馬力が80馬力と小さい分を機体の軽量化で補い、高高度の戦闘ではドイツ戦闘機と対等以上に戦えました。ソッピース キャメルは大戦を通じて最多撃墜数を誇ります。フランスのニューポール 11は前述のフォッカーの懲罰を終わらせた優秀な機体です。

フォッカー E.III
300px-Fokker_EIII_210-16

 

出典:wikipedia

アルバトロス D.III

300px-Albad3

出典:wikipedia

ソッピース パップ

300px-Sopup

出典:wikipedia

ニューポール 11

1

出典:wikipedia

第一次世界大戦は飛行機が戦闘に利用された戦いですが、飛行機が出来てから10年余りで大変な進歩がありました。

そんな訳で第二回目に続きます。次は第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の戦間期の機体をご紹介します。

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