捜神記(そうじんき 搜神记 sou1shen2ji4 ソウシェンジ)
捜神記は捜神録や捜神異記、捜神伝記などとも言われ、全部で30巻からなります。東晋の史学家である干宝による民間の神奇怪異伝説を集めた書物です。捜神記は現代から見ると迷信や妄想的な内容が多いですが、当時の世の中の民族風習、思想などを反映しておりますので、当時の世の中を知る上で貴重な文献ともなっています。
干宝が捜神記を書いた理由を、神や霊獣は作られたものではないことを示すためである、と述べています。つまり、捜神記の名前の通り、様々な伝説や故事を集めまとめることで神や鬼を捜してその存在を明らかにしようという試みでもありました。捜神記の内容は神霊、妖魔怪異などの民間伝説から仏教などまで織り交ざっており、故事に出てくる主人公も鬼のような神怪です。
捜神記中の故事は大小さまざまな故事からなっており、ストーリーの構成は非常に簡単です。虚構を交えて神秘的な色彩が添えられています。晋代の陶淵明の記した捜神后記10巻と宋代の章炳文の捜神秘覧上下巻はどちらも捜神記から啓発され影響を受けて書かれています。
捜神記の原本はすでに喪失されて残っていません。現在残っているのは、後世の人々が編纂した内容です。捜神記は全部で20巻あり、454もの大小さまざまな故事が記載されています。その中に《干将莫邪》、《李寄》、《韓凭夫婦》、《呉王小女》、《董永》等の今でも知られている有名な話もあります。
捜神記の特徴の一つにそのストーリー性があります。非現実的な出来事を通して理想と愛憎が表現されており、暴政に反抗する精神なども描かれています。捜神記の文学作品的な価値も高く、後世に与えた影響も大きいです。例えば、清代の伝奇故事である、蒲松齢の《聊斎志異》や、神話戯の《天仙配》などにも大きな影響を与えています。
中国では”鬼神信仰”は古くから行われてきた伝統的な信仰です。鬼神と山川を祀り、同様に先祖も祀ります。商周以来、歴代帝王は皆祭祀を行いそして神鬼伝説を書籍として残してきました。山海経や淮南子を除いて、捜神記は神鬼伝説を集めた書物の集大成とも言えます。
このため、その内容は荒唐無稽に感じられるかもしれませんが、その意味を深く考察していくと様々な時代背景が見えてきますので、古代中国の研究や神話伝説の研究に不可欠な書物です。
今回は干宝の捜神記のご紹介でした。中国の神獣や神話、伝説などを調べていると大抵捜神記か山海経か淮南子に行きつきます。これらの書物が中国における様々な話のネタ元になっている上に、資料的な価値も非常に高いです。
日本で言うならば御伽草子などを通してその当時をイメージする感じでしょう。中国の場合は二千年も昔のことですから、凄いですねΣ(゚Д゚)
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