水は可視光付近では波長の長い光ほど吸収しやすい特徴があります。水分子が光を吸収すると光のエネルギーは熱エネルギーに変わりものは温まります。一般的に赤外線ヒーターが使用されていますが、これは人間の身体が主に水で作られており、可視光よりも波長の長い赤外線をより多く吸収することを応用しています。人間の身体は水が多く含まれているので、赤外線で温まりやすいのです。
視点を海に戻してみましょう。海も主に水でできているので、赤外線を良く吸収します。また、赤外線に近い波長の赤色の光もよく吸収します。波長の短い青色や紫色の光は吸収されにくいので海中で反射を繰り返します。つまり、水深が深くなればなるほど、赤い光は水に吸収されてなくなり、青い光が多くなります。海中には赤い光が極端に少なく、海中から反射された光には青色が多く含まれているのです。これが海が青く見える理由です。
海の200メートル以上の深い部分では赤い光はほぼありません。赤い光がないので赤い色は見えずに黒く見えます。赤い魚やエビ、カニは、深海では黒く見えるのです。外敵を避け、身を隠すためには黒である必要はなく、赤でもいいというわけです。深海の魚やエビに赤い色が多いのはこういった理由があります。
また、魚やエビの赤色はアスタキサンチンといい、食物から取り込みます。白身の鮭がオキアミを食べてサーモンピンクと呼ばれるオレンジ色になるのもオキアミに含まれているアスタキサンチンを食べたからで、オキアミ自体は植物プランクトンからアスタキサンチンを摂取しています。赤い色素は身体に残りやすいという理由もありますが、深海では赤でもいいので、わざわざ赤い色素を分解する必要もなく、むしろ赤色は好都合なのでアスタキサンチンを利用して赤くなっているともとらえられます。
ちなみに、空の青さは海が青く見える理屈と異なります。空が青いのは、レイリー散乱により波長の短い光ほど散乱されやすいため、波長の短い青い光が主に上空で散乱されているからです。散乱とは砂を壁に投げつけたとき砂粒が様々な方向に飛び散ることを想像してもらえるとわかると思います。
赤色はあまり散乱されずにまっすぐに地上に届いています。同じ青なのに海の青さと空の青さは原理が異なります。しかし、大気が分厚かったらどうなるのでしょうか?青い光は散乱されて地上に届くころには無くなっています。次に緑や黄色が散乱されて出しますので青色から徐々に黄色に変わっていきます。そして最後にはオレンジや赤い色が残りますので、空はオレンジ色になります。これは朝や夕方の空の色と一緒です。夕日は斜め方向に照らしているのでその分光りが大気中を通る距離は長くなりますので我々の目に届くころには青色の光が無くなっており赤い色が散乱されているためです。
大気が今より分厚かったらレイリー散乱により、昼間でも空の色は青ではなくオレンジ色になっていることでしょう。
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