蛟龍、虬龍、燭龍、蟠龍、窫窳など様々な龍たち1:中国の神獣、四象、霊獣特集

中国に古くから伝わる神獣や霊獣たちを紹介している神獣特集ですが、今回は龍についてご紹介します。龍と言えば、四神の一柱である青龍が最も有名でしょうか。その他にも黄龍、応龍、龍生九子など有名な龍がいますが、今回はメジャーな龍ではなく蛟龍、虬龍、燭龍、蟠龍、窫窳などマイナーな龍をご紹介いたします。

蛟龍(こうりゅう 蛟龙 jiao1long2 ジャオロン) 属性:水

古代中国では、角のある頭を公龍といいました。二本角のある頭を龍と、一本角のある龍を蛟(こう)といい、角のない龍を螭(ち)といいました。蛟龍は龍の一種の海龍で、強大な法力を誇ります。文献によっては、《韻会》のように角のない龍を蛟と呼ぶとあったりしており、角の有無は文献によってまちまちです。日本では蛟をみずちと呼び人々に害をなす化け物として描かれています。

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龍は中国の歴史の中で、様々に変化しました。例えば、雲を呼びよせ雨を降らせたり、万物に通じた神秘の動物であり、うろこを持った動物たちの長であり、黄龍のように四霊(龍、鳳、麒麟、亀)の長でもあります。古くからは様々な王朝の皇権の象徴として用いられ、各海の龍王のように四海を統治する力を持っていました。しかし、蛟に関しては逆で、多くの蛟は様々な場所で災いをもたらすと言われるようになり、悪蛟と呼ばれるようになりました。




蛟龍は洪水を起こすことができるとされ、蛟龍はよく人に目撃されていたため、多くの人が蛟龍を知っていました。住んでいる場所は人里から遠く離れた湖や水のある静かな場所の水の底です。池や河川に住み着いているのが蛟龍です。水にもぐっていることから潜蛟とも呼ばれます。蛟龍には角があり、角はまっすぐで短く、枝分かれはしていません。足は退化して短くなっており、全部で四本の爪があります。これは、古代皇帝の衣装に描かれていた飛龍と同じ爪の形をしています。

  • 虬龍(きゅうりゅう 虬龙 qiu2long2 チウロン) 属性:火

虬龍は角のある小型の龍を指します。屈原の《天問》には、虬龍は熊を背に乗せていた、とあります。宋の《瑞応図》には、龍馬神馬、河水の精也、体長は八尺五寸で首は長く翼があり、毛は長く、九種類の鳴き声を持っていた。虬龍は伝説中の瑞獣で、神馬であり、馬が八尺以上になると龍になる。その龍の中で二本の角のある龍が虬である。
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屈原の《天問》には、虬龍は鉄の子であり、天地開闢後に初めて誕生した龍で、身体は赤く熱く、融解した鉄を彷彿とさせる。うろこは全身の血管に流れる炎が浮き上がって見えているようで、まるで龍の形をした溶岩である。虬龍には翼はないが、角はあり、二本の角がらせん状に延びており、片時も止むことなく燃焼していた。この熱により、天地開闢の荒野の凍えるような寒さを和らげることができた。虬龍は火に属し、初期の四龍の中で最もよく戦ったため、無慈悲な性格が付け加えられた、とあります。このため、夸父(こほ)と共に、鍛冶師など火を扱う職人たちの信仰を集めました。

  • 燭龍(しょくりゅう 燭龙 zhu2long2 ジューロン)

燭龍はまたの名を燭陰や逴龍とも言います。胴体は龍ですが、頭部は人間で足はなく、口に燭をくわえています。西北に日がなくなれば、外に出て暗がりを照らすと言われています。伝説では、その威力はすさまじく、目を開いている場合ですと、普通の日中のような明るさをもたらします。目を閉じると、だんだんと夕暮れのように光が弱まりやがて夜のように暗くなると言います。

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《山海経 大荒経》には、西北海の外、赤水の北に章尾山があった。その山には神が住んでおり、赤い蛇の胴体に人間の頭部で、目は直線状に配置され、目を閉じるとあたりは暗くなり、目を開けるとあたりは明るくなった。ものを食べず、寝ず、休みもせず、風雨はその神に集まっていった。名を燭九陰といい、またの名を燭龍と言った、とあります。また、山海経には、鍾山の神で名を燭陰といい、起きているときは昼となり、寝ているときは夜となった。息を吐くと冬になり、息を吸うと夏となった。何も飲まず、何も食べず、休まず、風を呼び雨を降らせることができた。体長は千里あり、人の頭部で、胴体は赤い蛇、北方の極寒の地である鍾山のふもとに住んでいた、とあります。




《大荒北経》には、天が西北に不足して、陰陽の行方がわからなくなったときのために、龍が火精を口にくわえて天門中を照らす、これが燭龍である、とあります。

  • 蟠龍(ばんりゅう 蟠龙 pan2long2 パンロン)

蟠龍とは、地中に住み天には昇らない龍のことです。形状はとぐろを巻いて輪になっています。中国の神話中では、蟠龍は水龍で、東方の湖に住んでいるとされています。蛟龍と一緒で、雨や水と関係が深いため、枯れない泉には蟠龍が住んでいると考えられていました。また、古い中国の建築物の天井や柱などに身体を丸く環状に描かれている龍は蟠龍です。

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○ 蟠龍施法の伝説

大昔に、大干ばつが起こりました。緑の農地は枯れ果て、木々の緑はなくなり、大地からは生き物が消え、民は飢えて毎日天を仰いで哭いていました。東海龍王の第十五番目の息子である蟠龍は、よく人目を盗んで人間のところに遊びに行っていましたが、龍王がこれを知り激怒し、蟠龍を三元仙君のもとで厳しい修業を行わせることにしました。




彼は聡明で学問を収めたため、三元仙君はことさら蟠龍をかわいがり、自分の持つ変幻術などの仙術を全て教えました。ある日、蟠龍は再び人間のもとにこっそり遊びに行きました。その時、蟠龍は眼前に広がった光景に言葉を失いました。作物の収穫の時期にもかかわらず、田畑に人はおらず、生気を失った大地を見て心が切り裂かれる思いがしました。

遊びに来たはずの蟠龍は真剣になり、三元仙君に教わった仙術を使って、尾を天に向かって円を描くように回しました。すると、天にみるみる雨雲が集まり、激しい雨を降らせました。大地にとっては恵みの雨です。その雨は人々の心にも沁み込んでいき、老若男女みんな外に出て天を仰ぎ、降り注ぐ雨粒を顔に受けながら大雨の音を打ち消すように歓喜の声をあげました。蟠龍が雨を降らせた後、世界に緑が戻り、人々は感謝の言葉を龍神に贈りました。

この情景を見届けたのち、蟠龍は不本意ながら宮中の会話もない退屈で寂しい元の生活へ戻りました。その後蟠龍は、千山万嶺をめぐっているとき、干ばつを見ると雨を降らせ、木材を運ぶための筏が座礁していたら別の場所の水を飲み、吐き出すことで水かさを増して運行を助け、人里に凶悪な野獣の群れが現れて人々に脅威をもたらすと、この野獣を退治し、疫病が発生すると人々の身体を気遣い大山の上から下まで薬草を探し、昼も夜も人々のために働き、人々の幸福のために尽くしました。




人々の生活は次第に良くなりましたが、蟠龍は疲れ切って死んでしまいました。蟠龍の大きく長い体は、平度の肥沃な土壌の上に横たわっていました。その横たわっている体の頭部は南を向いていたため、2つの美しく澄んだ目は南方の人々へと受け継がれました。このため、南方の人々の目は次第に良くなっていき、山の石が透けて見え、地下の財宝を見つけ、風水地理を知ることができました。その霊巧な尾は、北方に伸びていました。そのため、北方の人々の足は非常によくなっていきました。

  • 猰㺄(ヤーユゥ ya4yu3 日本語の読み不明)

猰㺄は窫窳(あつゆ)とも言います。伝説では一度は天神で、燭龍の子供でした。燭龍も猰㺄ももともと穏やかで善良な龍でしたが、”危”(二十八宿星(星座)の一つで、鳥の頭に人の体で、手には木の杖を持っている。)という神に殺されました。天帝は燭龍が傷心し意気消沈している姿を見るに堪えず、猰㺄を生き返らせました。しかし、復活後猰㺄は意図せず残忍な性格に変わっており、人を食べる怪物になってしまいました。猰㺄の外見には諸説あります。人の頭部に龍の体で大きさはタヌキと同じという説や、人の頭部に牛の体、馬の脚という説もあります。また、龍の頭部に虎の体を持った巨獣や、蛇の頭部に人の体などなど形状に関する説は多くあります。猰㺄は人を食べることから、最後は堯帝が弓の名手であった羿に命じて殺させました。

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他の伝説では、窫窳は羿が殺した最初の怪物と言われています。人の頭部と長い蛇の体を持つ窫窳は天神でした。黄帝の時代に人の頭部に蛇の体を持つ天神”二負”が、手下である天神の”危”に扇動され、窫窳を謀殺しました。黄帝がこのことを知り、激怒して二負と危を処刑しました。その後、部下の天神達に窫窳を崑崙山に安置させ、数名の巫術師と不死の薬により窫窳を復活させました。しかし、窫窳は復活後予想外の行動に出ます。精神は混乱し、意識はもうろうとしていたため、崑崙山の下にある弱水の中へと落ちてしまいました。すると、窫窳の体は牛のような形に変化し、全身は赤く、人の頭部で、馬の脚を持ち、赤子のような声で泣く猛獣となってしまいました。10日もたったころ、窫窳は人里へと向かい、人を襲い食べだしました。そして、黄帝の命を受けた羿により神弓により射殺されました。
出典:baike.baidu.com

黄龍、応龍、青龍の他にもまだまだたくさんの龍がいました。そもそも東海龍王の子供の一人が青龍という伝説もあります。この東海龍王の第15子が蟠龍でしたらその他にも13柱の龍神がいることになります。その他にも西海龍王や北海龍王、南海龍王などもおり、龍族全部合わせると中国の伝説上には相当数の龍がいることになります。

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